第22話「狂信するもの」

ゴロ(サンダーの父)「引き止めないで欲しい。お前は関わりすぎた、それ以上好奇心で関わるな。」
十文字(無双)「ここまで関わったのなら…私は社長が彼を逃がすというのなら反対はしません。私は…蔡さんへ頼まれて隣町へ行こうと思っています。良かったら一緒にいきませんか。」
ゴロ(サンダーの父)「…お前は父親に似てるのかもしれないな。」
諦めたのか、そのまま振り返らずに雷流丸を連れてゴロは先を急いだ。説明はなかったがついてきてもいいと判断した無双は苦々しい顔をした鬼江と後をついていく。鬼江はさっきから話が見えなくてブツブツ文句を言っているが無双は気にしないことにした。
鬼江「あのね、無双ちゃん」
十文字(無双)「なんですか?」
鬼江「蔡ちゃんに頼まれたって…あんた達そんなにいい関係だったの?妬けちゃうな。」
十文字(無双)「はぁ?」
鬼江「だってそうじゃない?私が大怪我して命がけって時にそんな約束してたなんて…浮気もの!」
効果音「ドスッ」
十文字(無双)「はぐあっ!」
無双は鬼江からみぞおちへのパンチを喰らい、あまりの激痛にその場にしゃがみこみそうになった…。


効果音「ザッ、ザッ、ザッ……」
ゴロを先頭に雷流丸、無双と鬼江がついていく。無双は鬼江に攻撃された部分を押さえながら足取り重く歩いていた。
鬼江「ねぇ、場所ぐらい教えてくれない?」
鬼江は誰に尋ねるというわけでもなくその場にる3人に話し掛けているわけだが誰も答えようとしない。特にゴロに至ってはいつもよりも近寄りがたい雰囲気だ。
十文字(無双)「鬼江さん、そろそろ着きますよ。ってあぁ!」
足になにがぐちゃりとしたものを踏んでおそるおそる足をあげると無花果が潰れている。ふと、蔡にもらったあの時の味を思い出して無双は顔を曇らせた。
鬼江「無双ちゃんってドジね。ちゃんと足元を見ないと……」
鬼江は後で立ち止まってる無双を振り返って呼びかける。ハンカチを貸そうとした時、空から紙飛行機が大量に降ってきた。
効果音「カサカサカサッ……」
大量の紙飛行機は地面に着地すると大きな獣の姿に変形していく。それは…無双や鬼江を襲った黒犬の姿だった。
十文字(無双)「何っ?!」
パーフェクトトランスフォームを発動しようと身構えた無双だが、さっき踏んだ無花果で足を滑らせてしまった。思い切り背中や後頭部を打った瞬間、黒犬が彼の上にかぶさって来た。
鬼江「無双ちゃん!」
ゴロ(サンダーの父)「無双!!」
叫ぶ余裕もなく目の前が真っ暗になったその時、白い光が目の前の闇をかき消した。無双はあの猫の姿が見えた気がした…いや、似ていたが彼ではない何者かだった。
十文字(無双)「(…フジじゃない…あの姿は…!)」
「………」


ほんの一瞬、瞬きをするとその姿は光にかき消されてしまった。
鬼江「無双ちゃんに手ぇだしてんじゃないわよ!」
鬼江が黒犬の背後に回って蹴りを入れる。ゴロも雷流丸も協力して黒犬を追い払おうとした。それでも数は増えていく。
十文字(無双)「(…白きもの。あれは幻か)」
ふらつく足でなんとか立ち上がって鬼江と戦おうとしたがすでに囲まれてしまっている。このままでは4人ともやられてしまうだろう。
雷流丸「この黒犬は人為的に作られたものだっ!本物じゃない!!」
鬼江「じゃあ…誰が作り出してるのっこっんんな迷惑なもの!」
息を切らしながら鬼江は黒犬を吹き飛ばしていく。だがまったく減るどころか数は増える一方だ。
ゴロ(サンダーの父)「あの紙飛行機を折ったものが念をこめたに違いないっ!」
効果音「ガアウウウッ!」
十文字(無双)「……パワーの源が何処から来るのか分かれば、この黒犬を制御できるのに!」
悔しそうにうめく無双の傍で雷流丸は何か考えていた。そして、黒犬がまとわりつくのを払いながら無双に接近した。
雷流丸「お前の『雷の杭』を使えば、おとなしくなるかもしれない…あの技なら相手の動きを止めることが出来る!」
十文字(無双)「ええっ…?」
雷流丸の言葉に無双は目を丸くした。あの技は雷流丸との戦いで一度使ったきりだ。しかも、満身創痍の中で無意識に出した技なので、どのようにして出したのかまったく記憶がない。

無意識にだした技をここでやった場合、もしかして周囲を巻き込んで自滅するかもしれない危険性があった。
鬼江「…も〜限界っ!」
ハイジャンプして回し蹴りやかかと落しを連続で出していた鬼江が諦めに近い弱音を吐いた時、変化が現れた。
効果音「シュウウウウウ……(黒犬が消し飛んでいく)」
周囲をじわじわと囲んでいた黒犬が消し飛んでいくではないか。あっけにとられてその光景を眺めていると手を叩く音が聞こえた。
誘拐犯3「…たいしたことない奴らだな。こんなのにやられたのか、雷流丸のおっさんよぉ。」
手のひらに深い十字の傷をもった細身の青年が、皮肉の笑みを浮かべながら森の中から出てきた。それはかつて雷流丸に命令されて誘拐の一味に加わった1人だった。赤と黒が目立つ服はあの戦いの雷流丸を彷彿とさせるが細身の体に糸目の目は頼りなく見える。だがさっきの幻覚を生んだのはこの男だろう。
誘拐犯3「蔡もこんな偽善者どもに殺されたんだ。浮かばれねぇっての…、虫唾が走るぜ。」
ゴロ(サンダーの父)「……何だと?」
糸目の青年はやや乱暴に地面に唾を吐いた。無双はその男を見た途端、悪寒が走った。
十文字(無双)「(…この男、危険過ぎる…!雷流丸とは違ったオーラを放っている…)」
誘拐犯3「おや、その額の傷は?」


鋭い眼光に見つめられて無双は身動きできずに硬直した。
誘拐犯3「……綺麗だよね、その傷。俺とおそろいじゃん。十字架だ。」
ナレーション「青年は無双だけを見つめながら近寄ると小型ナイフを手のひらから出し無双の額をすれすれになぞるように辿るとゆっくりと微笑む。」
誘拐犯3「額の傷はって聞いてるだろ?お・に・いさん。」
十文字(無双)「他の誘拐犯はどうした……」
誘拐犯3「あぁ〜あいつらなら殺したよ?少ない金を奪い合って見苦しかったんで、こう…喧嘩はいけませぇ〜んって…」
軽い口調からやや低い怒気を含んだ声色になり青年は手の中のナイフを弄びながら答えた。ナイフには既に誰かの血が赤黒くこびり付いている。
誘拐犯3「ぶっ殺したよ」
青年の羽織った赤い着物がひらひらと風にゆれると僅かに黒蝶の刺繍も舞うように揺れている。そして空を仰いで『蔡』と呟いていた。
効果音「ジャキン!」
社長の顔が目に見えて険しくなり、震えた手でパーフェクトトランスフォームで作った刀を発動しようとしていた。気が狂ったように笑う青年の前ににじり出ようとしたゴロを慌てて無双が止めた。
十文字(無双)「駄目です!社長!」
ゴロ(サンダーの父)「止めるな!…あいつだけは…!」

誘拐犯3「あぁ?おっさん、何怒ってるの?」
ゴロ(サンダーの父)「…蔡を監視し、うちの家の周りをうろついていた犬はお前だったか…」
誘拐犯3「今頃気がついたのかよ。蔡がてめぇの家に転がり込んで来て、甲斐甲斐しく息子のふりしてた数年間、ずっと俺はそこのじじぃに報告してたわけ。」
ゴロは月夜の日に木の陰から覗く黒い蝶の着物を知っていた。それは時に監視されているような不気味さがあり何度も探そうとしたが空気を掴むようにすり抜けてしまうので捕まらなかった。
誘拐犯3「蔡はさぁ、あんな所で死ぬような奴じゃなかった、可哀想な蔡。俺は友人としてだ、お前らをここで殺すことにした。覚悟はOK?」
十文字(無双)「…蔡と話したのか?蔡はお前を友と認めたのか?」
誘拐犯3「いやぁ〜ただ、俺が名前を忘れたといったら名付け親になってくれたっけかな。遠くから見てるだけだったがな、情がうつったんだよ。」
鬼江「はっ、あんたこの人数で勝てると思ってるの?」
誘拐犯3「この場でシンボルストーンを爆発させればてめぇらも巻き込んで皆殺しだ。ヒャハハハハハッツ」
十文字(無双)「く、狂っている!」
鬼江「悪趣味!こんな男の道連れなんて真っ平ごめんよ!」
誘拐犯は自分のシンボルストーンを何度も上に放り投げていた。ちょっとでも動いたら男は手榴弾のようにシンボルストーンを投げ、破壊してしまうだろう。無双たちは身じろぎできずに男の一挙一動を見ていた。


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