第6話「サンダー、誘拐される」

効果音「ひゅーーー…カコーーン…」
ナレーション「ししおどしの音が聞こえる。推定百坪はあると思われる庭が見える場所にサンダーの部屋はあった。無双はいそいそと勉強の準備をしていた。」
十文字(無双)「1時間目はお習字の時間です…墨とすずりの用意はしてますか?」
雷猫・サンダー「なぁ…勉強やめて遊びにいかない?」
十文字(無双)「駄目です。遊ぶ時は遊び、学ぶときは学ぶ!けじめはしっかりつけないと…」
雷猫・サンダー「うそだっ!だってギンは勉強なんかしなくても強ければいいっていってたぞ」
ナレーション「ガクッと崩れそうになる体を支えて無双は気力で持ちこたえる。それにしてもギンはなにを教えてきたんだろう。いや、だから自分が抜擢されたのだと思いなおす無双だった。」
雷猫・サンダー「男は強くなって大事な人を守れたらいいってギンがいってた。新人は違うのか?」
十文字(無双)「いえ。それはそうですが。守るべき知恵も必要になります。冷静な判断力をなくし、我を忘れた行動では守るべき相手も守れません。勉強もまた強さです。」
雷猫・サンダー「ふーん。なんだかわかんないけどすればいいんだな?」
十文字(無双)「そうです。この際ギンさんの存在…じゃなくて、言葉は忘れてください。」
ナレーション「失礼なことをいいそうになって慌てて口を止める。教育者としてのギンは悪いことは言ってないが無学のままでは本人のためにはならない。」
十文字(無双)「では、坊ちゃん、ご自分の名前を書いてください。名前は自分の顔ですから、人前で書いても恥ずかしくないように。」
雷猫・サンダー「えー、そんなのいつも書いているのに何で練習する必要があるんだよ、新人?」
十文字(無双)「私の名前は新人ではなくて無双です!」
雷猫・サンダー「じゃあ無双って呼んでやるからサンダーって呼べよ。その坊ちゃんっていうの落ち着かないし」
十文字(無双)「そ…それは…っ」

「お茶とお菓子をお持ちしました」
ナレーション「気まずい空気が流れたかと思うとすっと障子が開いて現れたのは蔡だった。が、なにやら化粧をしている。苦笑いをしながら鬼江にされたことを蔡は話していた。」
「いきなり化粧をされてこの服も着せられたんですが…」
ナレーション「蔡が着ているのは派手なゴスロリ風の着物だった。…鬼江の趣味か?と無双は首を傾げる。」
雷猫・サンダー「違和感ないよ、不思議と」
「今ごろギンさんも捕まってるかもしれません…」
十文字(無双)「ブッ(お茶を吹く無双)」


ギン(十文字の上司)「ぎゃああああああ!!」
鬼江「そんなに嫌がらないでよ〜。ギンちゃんも色男だから似合うわよ〜。」
ギン(十文字の上司)「そんな服を着るぐらいなら死んだほうがましだ!」
ナレーション「いつの間にか用意された振袖を持ちながら鬼江はギンを追いかけていた。それをニヤニヤと他の従業員は高見の見物である。」
雷猫・サンダー「面白そうだから見に行ってくる!」
ナレーション「廊下を走る2人につられてサンダーも部屋を飛び出し廊下を走っていく。」
十文字(無双)「…やれやれ…」
「追いかけなくてもいいんですか?」
十文字(無双)「そのうち飽きて戻ってくるでしょう」
「そんな保障がどこにあるんですか…?」
ナレーション「その時、蔡はさっきとは別人のような冷たい視線で無双を見たかと思うと口元を少しだけつりあげる。無双は驚いたと同時に言葉に出せない恐怖を感じていた。」
「…もしかしたら永遠に戻ってこないかもしれませんよ。なんて、冗談ですけど」
十文字(無双)「なにか知ってるみたいな口調ですね」
ナレーション「無双の言葉に対して蔡は返事もせず、そのままその場を離れた。その頃、サンダーの家の周辺に不審な男が2人いた。」

誘拐犯1「…ここが雷猫一族の長の家か…」
誘拐犯2「兄貴、門の前に警備員がいますぜ…真正面から行くのは無謀ですぜ」
誘拐犯1「お前、あほか。そんなこと分かりきっていることを!」
ナレーション「のっぽとちびと言うにふさわしいほど身長差が大きな2人組であった。はたから見ると漫才師かと思われるようなやりとりを繰り広げていた。」
「(直接手を出さなくてもキングをチェックメイトするくらい簡単なことだ…)」
ナレーション「蔡が手をかざすと庭の池は巨大な鏡になった。そこには周辺にいた不審人物の姿が映し出されているが、暫くすると波紋で映像が乱れた。」
効果音「バシャッ」
ナレーション「池の水がはねる。誰かが背後から石を投げたからだ。石は水面を走るようにはねてそのまま沈んでいった。」
ギン(十文字の上司)「…そんな場所に立っていたら足を滑らせるぞ」
ナレーション「なんとか鬼江から逃げ切ったギンが柱に背中を預けて蔡の傍の池まで石を投げたらしい。」
ギン(十文字の上司)「…社長の恩義を忘れてこの辺を探ってるみたいだがやめたほうがいい。」
「…優しいんですね」

ナレーション「サンダーはその頃、ギン達を見失って門の外にまで出てしまった。」
雷猫・サンダー「あれっ?どこいったんだ!」
ナレーション「2人組は突然のサンダーの出現に思わず後ずさりをした。まさか、向こうからやってくるだろうとは思ってもいなかった。」
誘拐犯1「雷組のところのガキだ…棚から牡丹餅とはこのことだ。」
誘拐犯2「兄貴、どうするんですか?」

誘拐犯1「初めまして、坊ちゃん。おじさんたちは君を迎えにきたんだよ」
ナレーション「人懐っこそうな笑顔を浮かべて男はサンダーの目線まで屈む。サンダーはそれでも警戒心を解こうとはしなかったが…」
誘拐犯2「そうそう、隣町で子供だけのお祭があるんだよ、君も来ない?」
雷猫・サンダー「え?祭っ!行きたい!!」
ナレーション「ニコッと微笑んでサンダーは警戒心を解いた。隣町なんて行った事もないし、どんなお祭か興味があったからだ。」
誘拐犯1「じゃあ行くとするか」
ナレーション「3人の姿が遠ざかる頃」
ギン(十文字の上司)「サンダー!どこいったんだー!!出てこーいっ」
十文字(無双)「坊ちゃんっ…!(もしかして外に出たのか?)」
効果音「ブオオオオーーーーーン!!」
ナレーション「その時、無双の視線の向こうに大きな黒塗りの高級車が走り去るのが見えた。」


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