第6章・第24話「Fly High...」

シグレ(シャーマン)「おお…あれは!」
風猫の長老「雷猫の御方にあのような技を持っているとは…」
シグレ(シャーマン)「ところで長老、先ほどソレイユはなんと言ったのか?」
ナレーション「シグレの言葉に風猫の長老は慌てふためいた。そして、苦し紛れの言葉を漏らした。」
風猫の長老「そ、それは風の音がそう聞こえただけですよ…」

ギン(十文字の元上司)「どうだ、十文字!!」
効果音「ビビッ、ビビビッ、ビビビビッ…ビリリリリーーーー!!」
十文字「あ、ああ…そんなに調子に乗ると…あああ!」
ナレーション「遺跡が崩壊していく。それは圧倒的な威力だった。サンダーはギンが元野球児だというを知っていたのでこの技も何度か見たことある。」
雷猫・サンダー「久しぶりに見たな」
透明猫・レス「今時『褌』も珍しいからな」
ナレーション「それぞれが感慨にふけっている時、遺跡は完全に崩れていった。逃げ惑いながら天馬は建物から現れた強大な力を見て足をすくめる。」
十文字「あれが…封印された第二の宝?!」
ギン(十文字の元上司)「古代人がザンダー家に残した『邪悪を封印する電光捶』だ。」

ナレーション「ロープの先に鈴のようなおもりをつけた武器は銀色に輝きながら、浮遊したかと思うとサンダーの手元まで飛んでいく。驚いたサンダーがそのままその武器を手に取るとその瞬間、光は消えた。」
雷猫・サンダー「これを使えっていうのか?」
炎猫・フレイヤ「そのロープで天馬を封印するという意味では?」
ナレーション「天馬はその武器を見た瞬間に慌てふためき逃げようとする。それを阻止したのはケインとタマだ。」
風船猫・タマ「ここで逃がすわけにはいかない!」
雪猫・ケイン「お前の企みもここまでだ…覚悟しろ!」
天馬「グググググ…!!」


透明猫・レス「サンダー!早くそれで天馬を封印しろ!!」
雷猫・サンダー「ど、どうやって…」
ナレーション「サンダーは戸惑っていた。使ったことのない武器を渡されていきなり使えるほど器用でもない。それに…」
雷猫・サンダー「俺は修行しても以前より強くなってない…」
ナレーション「タマやレスが目に見えて強くなった気がしていた。タマやレスにとって意味のある「修行」も自分にとっては彼らのおまけでしかなかったのではないかと。」
ギン(十文字の元上司)「おい、十文字。サンダー『坊ちゃん』の激励にいかなくていいのか?」
ナレーション「遠くからサンダーの様子を見ていたギンが十文字に問い掛ける。十文字は辛そうに顔をしかめながら首を振った。」
十文字「……」
ギン(十文字の元上司)「お前もおとなになったな。」

天馬「ギシシシシシシッ!!」
ナレーション「武器を目の前にして困惑しているサンダーの目の前で天馬が奇妙な声を上げた。まるで武器を使えないサンダーを嘲笑っているかのようだった。」
雷猫・サンダー「(俺にはいつも親父の影がつきまとっていった…皆は顔をあわせるたびに俺と親父と比べていた…口では反発していたけど、それを自らで変えようとはしていなかった…俺は甘えていただけなのかもしれない…」
効果音「チリン、チリン、チリン…」
雷猫・サンダー「自分を変えられるのは自分しかいない…」

ギン(十文字の元上司)「(腰を降ろして)わしにもあんな頃があった。十文字、お前にも、な。」
ナレーション「ギンが緊迫した空気の中で何故かくつろいでるように優しい目でサンダーを見ている。その言葉に答えるように沈黙を守っていた十文字が話し出した。」
十文字「大人と子供の境界線なんて本当はどこにもないのかもしれません。だけど『男』である限りはこどもらしさが弱さになってはいけない。自分と守るものの為におとなになっていく…いつか判るときが来ます。」


効果音「ジャリッ(サンダーが右足を地面にめり込ませる)」
雷猫・サンダー「俺は、俺式のやり方でいく!」
ナレーション「周りのせいにして変えようとしなかった自分自身。なにかに苛立って焦っていた日。サンダーは己を振り返って考えたことは無かった。今回の戦いも傍観するだけかもしれないと思っていた。」
雷猫・サンダー「邪悪なる獣にあるべき姿を与えろ!漆黒の両翼を雷光の浄化で消し去れ!」
ナレーション「傍観するだけではなにも始まらない、その思いが言霊になる。サンダーの体からバチバチと電光が放たれるとそれは地面を伝って巨大な陣になった。」

ソレイユ「天馬の周囲に花火が回っている…」
炎猫・フレイヤ「綺麗ですね」
ナレーション「電流の方向がタマたちにも見えていた。サンダーの体から出来た電光はあっという間に天馬を追い詰める。」
雪猫・ケイン「この陣の中は電気抵抗のない地帯だ。サンダーの本領発揮だな。」
風船猫・タマ「伝記抵抗?それどういう意味?」
透明猫・レス「オームの法則…(小さく呟く)」
風船猫・タマ「大無の歩測?(さらに首を傾げる)」
ナレーション「そんな間にもサンダーは武器を両手にしっかりと握り締めて天馬に向かって放った。」
天馬「グギャアアアアアアア!!」

効果音「バリバリバリバリ!」
ナレーション「電流で囲まれた天馬の体がだんだん小さくなってくる。それはあるものへと変化し始めていた。」
風船猫・タマ「な、なんだ…あれは?」
雪猫・ケイン「電流によって天馬は闇の支配から解放された…そして、闇はあるものへと昇華させる…」
ナレーション「光と闇は正反対のようで表裏一体である。どちらがなくても創り出すことはできない。電流は膨れ上がった天馬の闇のパワーを中和させようとしていた。」
ソレイユ「私の贖罪の姿…」
ナレーション「目の前にいた天馬は小さくなり、12羽の白い鳩になって空に散っていった。あっというまの出来事だ。」
効果音「チリリン…」
ナレーション「サンダーの持っていた武器も砂のようにさらさらと手の平から消えていく。目の前の光景に呆然となったタマの頭上には鳩の白い羽が舞い降りた。」
風船猫・タマ「…白い羽だ。僕と同じ白だよ。」
ナレーション「バサバサッ…(羽の音)」


ソレイユ「…これでおわったんだな…」
ナレーション「タマは、ソレイユに柔らかな鳥の羽を手渡す。ソレイユは羽をぎゅっと握り締めて目を閉じた。」
ソレイユ「今まで…私は…。今更謝っても取り返しのつかないことをした。それなのに、お前たちは私を倒すどころか助けてくれた。どうして…?」
ナレーション「ソレイユは涙声になりながら、手を震わせて強く唇を噛んでいた。全員がソレイユを見つめながら、ソレイユの言葉に耳を傾けている。」
風船猫・タマ「ソレイユ。謝ればみんな許してくれるよ?僕だってレスのおやつをつまみぐいしたら謝るんだ。仲が良くても喧嘩になることだってあるし、でもそんな時は『ごめんなさい』って謝ればいいんだよ。心をこめて一生懸命謝れば許してくれる。僕はいつでも謝ってるんだ、ソレイユにも出来るよ。」
透明猫・レス「何時、つまみぐいしたんだ?」
雷猫・サンダー「俺のケーキも確か…」
雪猫・ケイン「アイスを「一口」とかいって全部食べられた気が…」
炎猫・フレイヤ「みんなのおやつを嬉しそうに食べてましたね(笑顔で)」
ナレーション「フレイヤ以外は全員タマに冷ややかな視線を送っている。かっこよく言った台詞が逆効果になって引きつり笑いをするタマの顔を見たソレイユは・・」
ソレイユ「あはは…はははっ!!」
風船猫・タマ「ソ…ソレイユ?!」
ナレーション「崩れた遺跡にソレイユの笑い声が響いた。その笑い声に最初は驚いていたみんなも、最後は同じ様に笑い出す。」

ソレイユ「ごめん、タマ。いい話を聞かせてもらったのにお前を悪者にしてしまった。」
風船猫・タマ「ひどいよ!ソレイユもみんなも!」
ソレイユ「…ありがとう、タマ。そしてレス、ケイン、フレイヤ、サンダー…ごめんなさい。」
ナレーション「そういって、深く頭を皆の前で下げるソレイユ。笑っていた顔を急に曇らせて頭を下げる。」
風船猫・タマ「ソレイユ、僕だって謝らなくちゃいけない。君のお父さんのこと。」


ソレイユ「……」
ナレーション「ソレイユは俯いているタマを見て一瞬悲しそうな顔をした。だが、すぐに微笑みに変わった。」
ソレイユ「タマ…そんな顔をするな…さっきの戦いでお父さんの思いは充分分かったから…」
風船猫・タマ「…ソレイユ…」
ソレイユ「そんな顔していたらお父さんが悲しむ…お前にも笑ってほしいって思っている…私もだ」
ナレーション「タマはソレイユの言葉に感極まり、涙がこぼれそうになった。ギンたちがタマの傍に歩み寄った。そして、シグレがソレイユに近づいた。」

シグレ(シャーマン)「ソレイユ…すまなかった…」
ソレイユ「申し訳ありません…シグレ婆さま…風猫の村の件についてはいくらでも罰を受けます…風猫の長老…」
ナレーション「風猫の長老の前でソレイユは深々と頭を下げた…そんな彼女の頭に長老は手を置いた。」
風船猫・タマ「…ソ、ソレイユはどうなるんですか?」
ギン(十文字の元上司)「年寄り連中で若い娘に罰をあたえるならわしは反対するぞ。」
十文字「ギンさん…服を着てください。」
透明猫・レス「…ん?」
ナレーション「レスが空を見上げた時、タマが助けた小鳥が大空を飛んでいた。晴れ上がった空の上を、自由に。レスはそれを見て思った。」
透明猫・レス「(ソレイユは自由にしてやらなくてはいけない)」
風船猫・タマ「あ!あの鳥。あんなに高く飛んでるよ。」
炎猫・フレイヤ「育てる親がいなくなってもああやって子供は空を飛ぶことを、本能で覚えているんですよ。」
雷猫・サンダー「…」
雪猫・ケイン「…本能…か…」
ナレーション「フレイヤの言葉に反応してなにか考え込むケインの横で、タマもレスと同じことを考えていた。」
効果音「ピピッ…ピィ!(鳥の鳴き声)」

ナレーション「向こうから他の鳥が飛んでくる。仲間を見つけた鳥は彼らと一緒に飛んでいった。それを見届けたタマはポツリとつぶやいた。」
風船猫・タマ「小鳥を拾った時にケインの言っていた事が今分かった気がする…」
雪猫・ケイン「…?」
ナレーション「タマはそれ以上何も言わなかった。ただ、空をずっと見上げていた。雲ひとつない青空は何も言わずにタマたちを見守っていた。」
風猫の長老「将来がある娘さんにそんな惨いことはせんよ…風も言っておる…事情はシグレ殿から聞いたよ。あんただけを責める訳にはいかん…追い込んでしまったあんたを止めることができんかった我々にも責任がある…」
ソレイユ「…長老…」
ナレーション「ソレイユは手で顔を覆って泣いていた。シグレは彼女の肩を優しく抱いていた。闇から開放された遺跡の周りの緑から太陽の光がこぼれていた。」


23話に戻る 過去ログに戻る 終章に続く。


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