第6章・第22話「One for all,All for one 」

ナレーション「ソレイユを抱き上げてギンが安全な場所まで運ぼうとする。ソレイユは拒もうと身をよじるがギンはそんなソレイユを叱り付けながらしっかりと抱きあげた。」
ギン(十文字の元上司)「誰だって完璧にはなれないんだ。少しぐらい弱い部分を見せる相手ぐらいいてもいいだろう?なぁ十文字よ」
ナレーション「背後にいた十文字にギンが言う。ソレイユは拒む力も無く、そのまま目を閉じた。」
ソレイユ「(…お前たちに何がわかるんだ…)」
ナレーション「誰かの腕、地面を走る音。そしてタマの声。「ソレイユを頼む」しっかりとそれが心強く聞こえた。」

ソレイユ「(…私は1人じゃない…?)」
ネミミ(タマの恩師)「(1人じゃない。わしがいなくてもお前には…)」
ソレイユ「(お父さん…いるなら姿を見せて!私を助けて!!)」
ネミミ(タマの恩師)「風船猫は、幸せを運ぶ…お前にとってのタマがそうなるように…わしは…見守っているよ…」
ソレイユ「(…あいつのせいで死んだのに…?お父さん、貴方は幸せにはなれなかった!!私もっ!!)」
ネミミ(タマの恩師)「(わしは幸せだった…今もお前の心の中で、タマの心の中で生きられるなら…」
ナレーション「深い意識の闇の中で。ソレイユはあの頃の父親と対峙していた。真っ暗で天井もわからない暗闇の中で、ネミミは確かにそこにいた。そしてソレイユを背後から優しく抱きしめると光の粒子になって消えたのだ。」
天馬「オマエニチカラヲヤロウ…」
ソレイユ「(私の中にはいってくるな…)」
天馬「『タマ』ヲコロセバオマエハカイホウサレル…」
ソレイユ「(私は…誰も憎んでない…本当は…居場所が…欲しかったんだ)」


風船猫・タマ「(友達になろう、ソレイユ。僕が君を助けるよ!)」
ナレーション「その時、ソレイユの心の中のタマと現実のタマの声がシンクロする。」
風船猫・タマ「ソレイユ、僕が君を助けるよ!」

ナレーション「タマは、ソレイユが安全な場所まで運ばれたのを確認してから天馬と向かい合う。強い瞳は敵の動きを捉え、その体には未知数の力を持っている。タマには不思議と恐怖も負ける気もしなかった。」
透明猫・レス「わしがいるのを忘れるな。タマの友達はわしの友達だ。」
雷猫・サンダー「ずいぶんと影が薄いが、俺もいることを忘れるなよ。」
炎猫・フレイヤ「タマさん、私もいますよ!」
雪猫・ケイン「油断をするな、相手は一筋縄ではいかないぞ。」

ナレーション「天馬はしなやかな体をうねらせ天高く飛んだかと思うと、その瞬間タマのほうに急降下してきた。」
透明猫・レス「(狙いはタマか!)」
風船猫・タマ「(ネミミ先生、みんな…僕に力をください)」
透明猫・レス「タマ!」
風船猫・タマ「(嵐や雨にも負けない空を彷徨う風船…そう、僕は…)」
ナレーション「沈殿した記憶の中でタマに語りかける仲間達。失ってしまった大切なもの。だけどそれらはタマに生きる力を与えてくれた。」
透明猫・レス「おおおおおおおお!!!!」
ナレーション「レスの叫びが響く。レスだけじゃない、サンダーも、フレイヤも、ケイン…みなが叫びだした。」
風船猫・タマ「天馬、お前が生み出すものは『無』だ!お前は僕の力で『無』にかえさなくちゃいけない!!」
天馬「ギゼイノウエニ、ノシカカッテイキテイルオマエタチコソナニモウミダサナイ『無』ダ!!」

ミヨ(ギンの姪)「(…『無』は与える事で『有』になる…)」
雷猫・サンダー「いくぜ、皆!」
炎猫・フレイヤ「パーフェクト・トランスフォーム・ウェポン・パワー…」
雪猫・ケイン「ライド・オン!」
ナレーション「5人はシンボルストーンを高く掲げた。そして、まばゆい光と共に光の練成陣が浮かび上がった。陣の真ん中にはレスの盾が浮かんでいる。」


ギン(十文字の元上司)「あの光は一体…?」
ナレーション「十文字とギンはソレイユを運びながら彼らとは離れた場所で光を見ていた。その光のまぶしさに目を開けていられないほどだ。」
十文字「…これは…!!」
ソレイユ「…くっ…(ギンの腕を振り払って立ち上がる)」
ギン(十文字の元上司)「お…お前どこにいくんだ!!」
ソレイユ「…タマに加勢する。自分で撒いたタネは自分で…、なんとかする…!!」
十文字「そんな体でなにができるんですか!やめなさい!!」
ギン(十文字の元上司)「…いかせてやれ、十文字」
ナレーション「唖然とする十文字の腕を振り払ってソレイユはタマの元に走り出した。十文字は我に返ってギンを責める。」
ギン(十文字の元上司)「…己の目で確かめればいい。力をあわせた時、どれだけの力が集まるか。それがどんな光を生み出すか。」
ミヨ(ギンの姪)「(タマさんはきっとやりとげるわ)」
ギン(十文字の元上司)「…そうだな。これでよかったんだな?ミヨ…」

効果音「グオン、グオン、グオン…」
雪猫・ケイン「本来、種族の違ったもの同士のパワーを結合することはできない…だが、この遺跡から出てきた盾が媒介となって、本来不可能だったパワーの結合が可能になる…」
透明猫・レス「この盾にそんな力が…」
雪猫・ケイン「この盾を使えるものは遺跡から盾を覚醒させたもののみ…レス、お前がそうだ…」
ナレーション「レスの持つ盾は遺跡を暴いた者たちが喉から手が出るほど欲しい盾だった。これまで、この盾を探すためにこの地は暴かれ荒廃していった。どれだけ探しても「邪悪なもの」の手には渡らなかった。それが今、レスの手にある。」


天馬「ギァヤアアアアアアア!!!!」
ナレーション「盾の持つ力と光に目を潰されてよろめく天馬は口から血を滴り落としながらそれでもタマを狙おうとする。タマがとどめをさそうとした、その時。」
ソレイユ「…天馬…そいつは私が殺す…!」
ナレーション「岩陰からふらふらになりながら、ソレイユがタマたちの元まで走ってきた。驚いたタマがソレイユを振り返ろうとしたが。その一瞬の隙を天馬は見逃さない。」
透明猫・レス「タマァァァ!」
ナレーション「一瞬、あたりが真っ暗になった。タマの体になにかが覆い被さってきてそこからなにも見えない。だけどそれは暖かいとタマは思った。それが誰かだとは気がつかないままに。」

ソレイユ「…お…前…なんて…大嫌…いだ」
風船猫・タマ「…?ソレイユ…?」
ナレーション「タマの体に血まみれのソレイユが覆い被さってきた。ソレイユの背中には銀と金の入り混じった矢が刺さっている。天馬が飛ばした矢。サンダーも、フレイヤも、そしてケインやレスも矢を止めることはできなかった。」
効果音「ドザッ(ソレイユが倒れる音)」
ソレイユ「…(少し微笑む)お前にとって…お父さんはどんな人だったか教えて…く…れない…か…」
ナレーション「どうしてこんなことを尋ねるんだろうとソレイユは思った。そして自分は此処でなにをしているんだろう、と。」
風船猫・タマ「…ソレイユ?ソレイユ!!」
ナレーション「指先が触れる。かすかに開いた口が「ごめんなさい」と言った気がした。力なく倒れたソレイユの体をタマは抱きしめる。」
風船猫・タマ「ねぇ、起きてよ…ソレイユ…」
ソレイユ「…」
透明猫・レス「慌てるな!心臓は外れている、揺さぶるな!」
ナレーション「それでもべっとりとした返り血はタマの手についていた。血は地面を流れやがてその血は大地に染み込んでいく。その血はソレイユの血だ。」

効果音「ピキィィーン」
ナレーション「次の瞬間、ソレイユを抱えたままのタマは光に包まれて目を覆った。」
透明猫・レス「まさか…!」
効果音「ヴヴヴヴヴヴヴヴ…」
風船猫・タマ「いやだ…ぼ、僕が助けるって言ったじゃないか…」
効果音「ヴィン、ヴィン、ヴィン…」


ナレーション「光に包まれたタマはレスたちの姿を見失う。気がつくとタマは原っぱに立っていた。」
風船猫・タマ「ここは…?」
ナレーション「腕に抱いていたはずのソレイユがいない。それに此処はどこだろう、とタマは思う。」
ネミミ(タマの恩師)「おーい、こっちに川が流れているぞ」
風船猫・タマ「ネ…ネミミ先生?」
ナレーション「タマの体をすり抜けてネミミは走り抜ける。驚いてネミミを見るとネミミに駆け寄る少女の姿…あれは…。」
風船猫・タマ「ソレイユ…」
ナレーション「タマよりも小さい、幼いソレイユが嬉しそうにネミミに縋っている。その手には花輪が握られていた。」
風船猫・タマ「ここは…ソレイユの記憶の中?」
ナレーション「ソレイユはくるくる回りながら原っぱを走っていく。それを暖かく見守る父親のネミミ。どこまでも続く青い空。優しい風。」
風船猫・タマ「ソレイユ!行っちゃ駄目だ!!」
ナレーション「不自然なぐらい、切り取られた綺麗な世界の中で、タマは言葉に出せないほどの不安感を感じていた。ソレイユがネミミと行ってしまえばもう二度と会えない気がして。」

ソレイユ「貴方だぁれ?」
ナレーション「あどけない大きな瞳がタマを見ている。悪意もない、無邪気な瞳で。」
ソレイユ「私。お父さんと、川で舟を流す約束をしたの。お兄ちゃんも一緒に行こう。」
風船猫・タマ「僕は…いけないよ。」
ソレイユ「どうして?なにか忘れ物でもしたの?」
ナレーション「少女の等身に屈んで、タマは柔らかな少女の髪に触れる。泣き出したくなった。自分は彼女から父親を奪ったんだ。」
ソレイユ「泣かないで?綺麗なものをたくさん見たら私、幸せな気分になったの。外にはこんな世界が広がっている、傍には大好きなお父さんがいるの。」
風船猫・タマ「…ソレイユ…失った時間は元には戻らないんだ…」
ナレーション「その言葉を告げると、ソレイユは元の姿に戻った。屈んだまま俯いてるタマの頬に触れる。タマは泣いていた。混乱した精神世界の中で、泣いていた。」

ソレイユ「何故、泣くんだ?」
ナレーション「ネミミの姿はいつのまにか消え、川にはネミミとソレイユが作った船が流れている。」
ソレイユ「この景色は私が昔、父と遊んだ時の場所だ。…あの時から父にお前のことを聞かされてきた。友達になれる気がしたんだ。会えるのを楽しみにしていた。」
風船猫・タマ「…」
ナレーション「どこまでも限りなく澄んだ青い空は吸い込まれるように綺麗だった。手をのばせばつかめる距離にありそうな雲。距離感を感じさせない深い青。ソレイユはずっと空を見つめていた。」
風船猫・タマ「帰ろう、僕と一緒に、みんなのいるところに。」
ソレイユ「お前に迷惑かけるかもしれない…」
風船猫・タマ「僕は迷惑じゃない。もっとソレイユと話したい。僕達には共通点があるじゃないか。ネミミ先生の気持ちを引き継ぐんだ。」
ソレイユ「…お父さんの気持ち…」
ナレーション「タマは立ち上がってソレイユに手を差し伸べる。」
ソレイユ「お前の手をとったらこの場所から離れなければならない…」


ナレーション「その言葉をいうと、原っぱは枯れていき、周囲は崖になった。それでもタマは動じないでソレイユを抱きかかえると空を飛ぼうとする。」
ソレイユ「まさかこの崖を飛ぶ気か?」
ナレーション「あの日、『魔物の崖』で滑落しそうになった先輩を助けた時と同じ場所に立っていた。あの時は無我夢中で先輩を助けていた。だが、今はその崖の下を見下ろして立っている。」
風船猫・タマ「この崖を飛ばない限り、僕の心に踏ん切りがつかない…。」
効果音「パラパラ…」
風船猫・タマ「嵐にも負けない、彷徨う風船のように…だあああーーーーーーっ!!」
ソレイユ「!!」
効果音「ゴオオオオッ!!」

天馬「キシャアアアア…!!」
ナレーション「タマたちがソレイユの精神世界にいた頃、レス達は劣勢に陥っていた。タマが消えたすきを突いた天馬がレスに襲い掛かってきた。」
天馬「ソノタテヲワタセ…ワタサネバ、オマエヲ…グアアア!!」
透明猫・レス「ぐっ!!」
ナレーション「闇に脚を取られたレスが転倒し、天馬が自分の口から発する闇によってレスを葬ろうとしたその時、白い光が再び天馬の目を貫いた。」
効果音「グワッ、ズバアァン!!」
天馬「ダアッ!!」
ナレーション「天馬は白い光によって目をつぶされ、前のめりに倒れた。レスたちの前にはタマとソレイユが立っていた。タマはレスたちにこうつぶやいた。」
風船猫・タマ「ただいま、皆!」


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