第6章・第21話「ダーク・ブレーカー(闇を破るもの)」

効果音「ゴゴゴゴオオオオオ…オオオオ…」
ナレーション「タマと天馬は対峙していた。レスはその様子を凝視していた。タマが寺からいなくなったときに見た映像がレスの目に蘇ってきたのだ。」
風船猫・タマ「お前は僕の手で闇に返す…これは僕がやらなくてはいけない…僕の手で終わりにしなくてはいけない…」
透明猫・レス「タマ!!」
ナレーション「エアー・キャノンをもつタマの手が震えていた。レスはただ動揺するだけだった。ただとてつもない不安が彼の心を支配していた。」

シグレ(シャーマン)「あの武器は!」
風猫の長老「どうしましたか!シグレ殿?」
シグレ(シャーマン)「あの武器は…風船猫一族に伝わる伝説の戦士が発動した武器…!エアー・キャノン…!」
風猫の長老「なんですと?!」
シグレ(シャーマン)「その武器から発するエネルギーはすべてのものを無にするという『禁忌の技』…まさか、あいつ…」
十文字「どういうことですか?」
シグレ(シャーマン)「あいつは自らを犠牲にして天馬を封印させるつもりだ!!」
一同「!!」


効果音「フシュウウウウ…ウウウウ…」
天馬「キガチガッタカ…キサマ、ワカッテイルノカ?…オマエガダソウトシテイルワザハ、オレハオロカ、オマエノイノチノホショウスラナインダゾ!!」
風船猫・タマ「それは…百も承知だ…」
天馬「…!!」
風船猫・タマ「怖いさ、本当は僕も…だけど、ためらっていては前には進めないことだけははっきり分かる…」
透明猫・レス「何を言っているんだ!!お前!!」
風船猫・タマ「レス…僕は…」
透明猫・レス「前にも言ったはずだ!生命で償うことだけは絶対に許さんと…」
効果音「ヴィン、ヴィン、ヴィン、ヴィン…」

ミヨ(ギンの姪)「(あなたはそれでいいの?)」
ナレーション「頬を優しく撫でるような風が吹く。それは懐かしい声をタマの耳に運んだ。」
ネミミ(タマの恩師)「(それでいいのか)」
効果音「ピシャン、ピシャンッ…(水が地面を打ち付ける音)」
風船猫・タマ「…ネミミ先生…僕は…」

ナレーション「その瞬間、地面を叩裂くかのような雨が地上に降り注ぐ。雨は石を転がし、すべての視界を曇らせた。打ち付ける雨の冷たさ黒い闇に包まれたソレイユの意識がかすかに蘇る。」
ソレイユ「雨の日は…嫌いだ。気…分が憂鬱に、な…る。世界で私1人になった気分。あの場所で閉じ込められていた時の、気持ちを思い出す…。」
ナレーション「歪んだ表情のソレイユの目にはなにも映らなかった。元々孤独の自分の名前を呼んでくれる相手はいない。だれも自分の姿を映さないなら自分も誰も見なければいい。たった一人の世界では誰も助けてはくれないから。」
ソレイユ「…助けて…」
ナレーション「ソレイユは自分でもなにを言ってるのか判らなかった。おかしい。自分の気持ちが矛盾してるのに気がつきながら「変だ」と思った。「誰に?」誰に助けを求めているんだ?と。」
ソレイユ「ああ…っ…あああああああああ!!!!」
ナレーション「憎むことだけが精一杯だった。父親を失った無力感。力を押さえつけられるほど憎しみが増加していく。フラッシュバックするのはあの時、唯一自分を見てくれた優しい瞳だ。気がつくんじゃなかった。タマに近づくべきではなかった。何故なら…ソレイユが憎んだタマの瞳も…ネミミと同じだったからだ。」
ソレイユ「…わからない…本当…は、誰を憎んでいるのか…わから…ない…」


透明猫・レス「うおおおおおお!!」
一同「?!」
ナレーション「突然、静寂を破るようにレスが絶叫した。タマと他のものはレスの方を見て驚愕した。レスの目がなんと赤くなっていたのである。」
雷猫・サンダー「な、なんだ?!」
透明猫・レス「どうしたんですか?!レスさん!!」
ナレーション「ソレイユが檻の中に閉じとめられていた時のことを思い出していたとき、レスは修羅のような顔で天馬を睨みつけていた。」
透明猫・レス「わしはあの時誓ったんだ、お前をなんとしてでも守ることを!お前がいなくなることはここいるすべてのものを哀しませることになるんだぞ!!」
ナレーション「薄れ行く意識の中、ソレイユは再び父の姿を見ていた。今度はレスの姿と父をダブらせていた。」
ソレイユ「お…お父さん…??」
ナレーション「レスは同時に無力感を感じていた。サンダーからPTの修行の話を聞いたとき、自分はただタマを見守ることしかできなかった。タマがミヨと共に洞窟に行ったときに取り乱した自分の姿を見てそう思っていた。」
透明猫・レス「もう、見ているだけは嫌だ、カギサギにいさんの次にお前を失うのは…う、う、うおおおおお!!」
ナレーション「その時だった。周囲の遺跡が突然、ゆれ始めたのだ。まるでレスの感情に呼応するかのように激しく揺れていたのだ。」

効果音「ドドド…ドォオオオオオオオ…」
風船猫・タマ「な…なに?」
ソレイユ「…失う…全てが崩れていく…」
風船猫・タマ「レス…僕は…ソレイユを助けたい。それが僕の償いだと思ってる。ここにもし、ネミミ先生がいたら、きっと今のソレイユを助けると思うんだ。きっと…」
ナレーション「足元の地面に亀裂が入って、それでもなお揺らぐことないぐらいの声でタマはレスに言った。」
風船猫・タマ「僕がいなくなったら悲しむ。ソレイユがいなくなったら誰も悲しまない…そうじゃないんだ…僕はソレイユの声が聞こえるんだ」
透明猫・レス「声?」
風船猫・タマ「ミヨさんの声みたいにかすかだけど、聴こえる。戦ってる間も、今も。」

ナレーション「ソレイユのことを完全に憎めたらどれだけ楽だっただろうとタマは思う。けれどそれが出来なかった。」
ミヨ(ギンの姪)「(貴方は優しいから相手の痛みも自分の痛みに変えてしまう)」
風船猫・タマ「優しくないよ…」
ミヨ(ギンの姪)「(いいえ。その優しさは強さになるわ)」
風船猫・タマ「(ミヨさん…君は見えないけど僕の傍にいるんだね)」
ミヨ(ギンの姪)「(私は川の守り神だったもの。何年も昔からみんなの傍にいた。タマさんもソレイユさんもみんな知ってたわ)」
ナレーション「昔、ネミミ先生と幼いソレイユが一度だけ川で草の舟を流していたのを見た事がある、とミヨは言う。本当に笑顔の可愛い子だったと。」
ミヨ(ギンの姪)「(あの子の笑顔を取り戻して)」


効果音「ゴォオオオオオオ!!」
風船猫・タマ「死にはしないよ…死んでたまるもんか…君を、ソレイユをおいて…死んでたまるか!!」
効果音「カッ!!カーーーン!!」
ナレーション「地面の亀裂から光を帯びた何かが現れた。それはレスの手元にたどり着いた。光がおさまるとその姿がはっきりと映った。」
風船猫・タマ「こ、これは…?」
透明猫・レス「た、盾…??何故、このわしに?」
ナレーション「突然の盾の出現に戸惑うレスに問いかける声がした。ネミミだった。ネミミはぼんやりとレスの前に現れていた。」

風船猫・タマ「せ、先生…」
透明猫・レス「あ、あなたは…!!」
ナレーション「レスはネミミとの再会に驚くばかりだった。ずっと前、タマのシンボルストーンによってタマの幼い頃に連れて行かれた、あの時以来だった。」
ネミミ(タマの恩師)「(タマ…お願いだ…わしの娘を…ソレイユを救ってくれ…そして、レス…君はその盾を使ってタマをサポートしてくれ…)」
透明猫・レス「ええっ??」


風船猫・タマ「先生…聞きたい事があるんだ…」
ネミミ(タマの恩師)「質問には答えられない。答えは自分でつむぎだすんだ」
風船猫・タマ「…先生?」
ネミミ(タマの恩師)「…タマ…わしの願いどうりに…成長した」
ナレーション「ネミミは、優しい瞳で懐かしむようにタマの傍に歩み寄る。そっと頭に手を置くとネミミの姿は霧にかき消されて消えた。」
透明猫・レス「タマ、今のは…」
風船猫・タマ「…レス!雨あがりの虹だよ!!」
ナレーション「ネミミが消えた瞬間、大きな虹が盾から発生したように天に向かってのびていた。」

透明猫・レス「この盾が虹を作り出しているのか?」
ナレーション「レスが盾を動かすとそれにあわせたように虹も動く。タマとレスは顔を見合わせてネミミ先生に感謝した。」
透明猫・レス「思い出したよ、タマ」
風船猫・タマ「?なにを??」
透明猫・レス「タマが描いた先生の似顔絵」
ナレーション「タマは笑ってレスの顔を見る。今度はレスの顔を描いてみたくなった。ソレイユも、みんなも。」
風船猫・タマ「僕は負けない!」
透明猫・レス「タマ…」

ナレーション「2人は闇の天馬のほうに向き直った。天馬はよろめきながら2人の近くに寄った、体から黒い煙がぶすぶすとくすぶっている。」
天馬「ググググググ…キ、キサマ…オレニナニヲシタ…?!」
ナレーション「2人の足元にはソレイユが倒れこんでいた。タマはとっさに叫んだ。」
風船猫・タマ「皆、ソレイユを頼む!」
一同「分かった!」


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