第3章「こころ」第9話「心で描くもの」

雷猫・サンダー「やっぱり雨が降ってきたな。(外を眺めながら)」
ギン(十文字の元上司)「この時期は天気が不安定だから仕方がない。そんなに外で修行したかったか?『坊ちゃん』?」
ナレーション「ん?とからかい口調で腕を首に回して絡んでくるギンを、サンダーがうるさそうに手ではらいのける。」
十文字「今日は寺の中で修行をします。書道の用具を用意しました。」
ギン(十文字の元上司)「おお。懐かしいな十文字。それはわしの作ったすずりか。」
十文字「ギンさんのすずりは重宝しています。」
ギン(十文字の元上司)「お前もお世辞がうまくなったな、十文字。」


ナレーション「すべて形がふぞろいのすずりはギンのお手製らしい。顔だったり星型だったりどちらかといえば子供向けに作られてるようだった。」
風船猫・タマ「このすずりの顔、レスに似てるね」
雷猫・サンダー「こっちのタイヤキのすずりはタマ専用みたいだな」
透明猫・レス「(むっとしながら)わしは普通のすずりでいい」
ギン(十文字の元上司)「これからする修行はこの半紙に筆で書くのではなく…すずりを使うのを頭でイメージしながら」
ナレーション「ギンは指ですずりにほんの少し触って半紙に見えない速さで文字を書く。半紙に描かれたのは龍の絵。筆を使ったような濃淡なタッチは見事だった。」
十文字「無駄のない速さで正確に形を捉えて絵を書くのが修行です。題材は個人の自由に任せまますので自由に画面を使ってください。判定はミヨさんにお願いしています。」

効果音「ズズズズズ…」
風船猫・タマ「ううん…すずりで描くって難しいよ…これが何の修行になるっていうの?」
ナレーション「タマは半紙とにらめっこをしながら、悪戦苦闘をしていた。すずりが思ったように動かない。横ではレスが黙々と何か描いており、サンダーも慣れた様子ですずりを使っていた。」
効果音「ズズズズズ…ビリッ!!」
風船猫・タマ「ああ!破けちゃった!」


ナレーション「タマは子どもの頃を思い出していた。タマは決して絵は上手い方でなかった。だが、ネミミはタマがどんな絵を描こうとも褒めてくれた。」
十文字「(タマに予備の半紙を渡して)失敗しても紙はありますよ。これは精神力のテストです。体を鍛えるだけが修行ではありません。」
ギン(十文字の元上司)「使うのを「イメージ」だ。すずりをどう使うのも自由。固定概念に囚われてないか?わしの動きを見ただろう?」
ナレーション「タマ達は自分の体の大きさ以上の半紙に向かい、すずりをもって絵を描いていたのだ。当然、タマの体は黒くなっていく。それをサンダーが黒猫だとからかう。」
透明猫・レス「少しは黙って描いてくれないか(二人を横目でちらりと睨む)」
ミヨ(ギンの姪)「(笑顔で3人の絵を見回る)」
風船猫・タマ「ミヨさん、これは僕の先生の顔だよ」
ナレーション「タマの中ではあまりうまいとはいえない作品になったが残り時間まで精一杯書こうと決めた。3人で競うことも大切だけど自分が納得いくまでやり遂げた結果なら受け止められる気がしたからだ。」

風船猫・タマ「ミヨさんの絵も見たいな」
ギン(十文字の元上司)「そこ!私語は慎むように!!」
ナレーション「ドラ焼きを片手にお茶を飲みながら注意するギンはあまり褒められた先生ではないなとレスは思った。」
十文字「残り時間1分です。」
ナレーション「気が付けば無我夢中で描いていた。体中が真っ黒になろうともそれすら気にならなかった。」
風船猫・タマ「出来た!」
ナレーション「タマの言葉にその場にいた全員が顔を上げる。満面に笑みを浮かべながらタマは半紙の上から立ち上がった。」


効果音「ゴオオオオー(嵐の音)」
ナレーション「その頃フレイヤは雨の中を走っていた。ケインの異常事態に身を震わせながら乱れた髪をかき上げてフレイヤは走る。」
炎猫・フレイヤ「(あのケインが、まさか…信じられない事態だけど伝えないと)」
ナレーション「嵐では直接伝えに行く方法しかなかった。嵐の中、タマ達のいる山まで走っていく。」
炎猫・フレイヤ「(ソレイユはPTを察知して居場所を掴んでるのかもしれない。あの時の映像の乱れはきっとそうだ)」
ナレーション「PTを使う者同士は引き合う運命にあると言われている。フレイヤは自分の気配を消しながら走っていくしかなかった。気配を悟られたらケインと同じ様になるだろう。」
炎猫・フレイヤ「はぁ…はぁ…(息が切れてその場に転んで地面に手をつく)」
効果音「バシャン(泥水が跳ねる音)」
ナレーション「視界が雨でぼやけてくる。体が冷たくて手の感覚もなくなってきた。フレイヤは力を潜めて走ったので体が冷え切ってしまっていた。」
炎猫・フレイヤ「(は、早く…)」


ギン(十文字の元上司)「で…その絵はいったい…はて…おはぎか…それとも、ぼたもちか…?!」
雷猫・サンダー「おはぎとぼたもちって同じものでは…」
ナレーション「ギンはしげしげとタマの出来上がった絵を眺めていた。ギンはミヨを方を一瞥した。」
ミヨ(ギンの姪)「(タマの方に歩み寄って絵をじっと見る)」
風船猫・タマ「どう…どうかな?」

ミヨ(ギンの姪)「(とってもよく描けてるわ)」
風船猫・タマ「え?いま…」
ナレーション「声が聞こえた。ミヨの声がタマの頭に直接響いた。驚いて口を大きく開けたままミヨを見る。」
ミヨ(ギンの姪)「(貴方の先生もきっと喜んでる)」
風船猫・タマ「あ…ありがとう!!」
ナレーション「タマは万歳をしながらぴょんぴょんと跳ね上がった。その様子をレスたちはポカーンと見ていたが、レスは静かに微笑んでいた。」
透明猫・レス「よかったな、タマ、おいしそうな先生だな。」
風船猫・タマ「ひどいなあ!」

ギン(十文字の元上司)「(ミヨ、お前にはタマの絵のよさがわかるんだな)」
ミヨ(ギンの姪)「(表面に騙されて肝心の内面をいつまでも見れない兄さんにはわからないわ)」
ナレーション「責めるような目をギンに向けたミヨは喜んでいるタマに目を向けてにっこりと笑った。」
十文字「ではレスさんの絵を見せてください」
効果音「ガタガタッッッ…(扉を叩く音)」
ギン(十文字の元上司)「雨戸が壊れてるんじゃないか?十文字、ちょっと見て来い。」

十文字「はい、わかりました。」
ナレーション「いつまでも続く音が耳に障ったギンが十文字に扉をみてこいと指示した。」
炎猫・フレイヤ「(…タマ…レス…サンダー…)」
ナレーション「フレイヤは最後の力を出して扉を叩くとその場に崩れ落ちる。」
効果音「ドサッ…」
一同「フ、フレイヤ!!」


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