第3章・第12話「火の中の龍」

風船猫・タマ「こうもりが…ぎゃあああああ」
ナレーション「洞窟の天井には真っ黒になるほどびっしりとこうもりがタマのほうを見ている。タマはビクビクしながらもこうもりを刺激しないように洞窟を進んだ。」
風船猫・タマ「うわっ!?」
ナレーション「タマの目の前は足場のない崖になっている。そして最下部まで広がっていたのは溶岩のような熱いドロドロした塊だった。それが渦巻いて音が反響したかと思うとうなり声のようにも聞こえてくる。」
風船猫・タマ「これ以上先には進めない…どうしょう…?」
ナレーション「そんな時、渦巻いていた赤いドロドロの塊の下になにかが光っているのが目に入った。」

ミヨ(ギンの姪)「(身を乗り出すと危ないわ)」
風船猫・タマ「ミヨさん、いつのまに?」
ミヨ(ギンの姪)「(PTを身に付けた者は、あの光を手に入れる事が出来るの)」
ナレーション「どうやって…とタマが聞こうとしたとき、下に広がっていた赤いドロドロの液体が龍のような形になる。それは天井まで届くような大きな龍だ。」
ミヨ(ギンの姪)「(この洞窟に住んでいる溶岩の龍よ。龍を倒した者はPTを授かるの)」
ナレーション「熱風がタマの頬をかすめる。赤々と灼熱の中から生まれた龍はタマに向かって大きく口を広げた。」
効果音「ズオオオオオ…ゴゴゴゴゴ…」
風船猫・タマ「あ、熱い!!」
ナレーション「タマはシンボルストーンを発動する構えをした。が、ここは魔法が使えない場所であることをすっかり忘れていた。そのすきを突くように龍はタマに襲い掛かってきた。」

風船猫・タマ「でも、ここで引くわけにはいかないんだ!」
ナレーション「一瞬引くような熱さの中でタマにはある決意があった。PTを手に入れてミヨもケインも助ける、それがタマを強くした。」
風船猫・タマ「だああああああ!!」


効果音「ズズズズズズズ…」
ナレーション「その時、タマの手から白い光が現れた。シンボルストーンを発動するときとはまた違った、でも、強くて優しい光だった。」
ミヨ(ギンの姪)「(頑張って)」
風船猫・タマ「うりゃあああああああー!!」
ナレーション「タマの体からは白く輝くシールドが張られ、それに触れた龍の体は無残に引き裂かれていく。そんな目の前の光景をタマは呆然と眺めていた。」
風船猫・タマ「これってなに?」
ミヨ(ギンの姪)「(気を抜かないで。それは一時的な壁にすぎないわ)」
風船猫・タマ「壁?…うっ、うわあああ!」
ナレーション「タマの足元が宙を浮いた。ずたずたになったはずの龍が現れたのだ。それは再び彼を飲み込もうとしている。」


効果音「ピカッ…ゴロロロロロロ…ロロロロ…」
透明猫・レス「タマーーーー!!どこだーーーーっ!!」
ナレーション「その頃、雷鳴がとどろく山の中をレスたちは歩いていた。レスとサンダーは張り裂けそうな声でタマを呼んでいた。だが、声は漆黒の闇に吸い込まれる。」
効果音「グゥオオオオオオオオ…」

ナレーション「龍がうなり声をあげてタマを飲み込む。ミヨの叫びもかき消されるようなうなり声は洞窟全体に響く。」
ミヨ(ギンの姪)「(自分の力を感じ取って!解き放つの!!)」
ナレーション「そして、タマは龍の中にいた。ミヨの頭に響く声も龍のうなり声で聞き取れない。不思議と体は無事だけど真っ暗なこの世界から抜け出す方法がわからなかった。」
効果音「ピキィィィン(青白く光る物体)」
風船猫・タマ「これは…(光の方へ近寄るタマ)」
ネミミ(タマの恩師)「こっちへおいで」

ナレーション「光はいつのまにかネミミ先生の姿へと変貌する。驚きながらもタマは優しい先生の差し伸べた手をとろうとした。」
ミヨ(ギンの姪)「(その手をとっては駄目!)」
風船猫・タマ「ネミミ先生…僕はどうしたらいいだろう。僕が歩くたびにみんなを傷つけてしまう。」
ミヨ(ギンの姪)「(あなたを必要としてる人の声を聞いて!それはあなたの先生じゃない。見せかけの希望よ)」
ナレーション「ミヨが龍に心を奪われそうになるタマを呼び止めている。タマは再びネミミ先生を見つめた。」
風船猫・タマ「…僕を必要としている人…」


透明猫・レス「タマーーーーッ!!返事しろーーーっ!!」
ナレーション「レスは泣き叫ぶようにタマを呼んでいた。それはとても痛々しかった。普段は冷静なレスの背中をサンダーは辛そうに見つめていた。」
十文字「レスさん、落ち着いてください!!」
ナレーション「足がもつれた状態で前に進もうとしたレスは前のめりに倒れた。慌てて十文字がレスの手を取ったが、レスはそれを払いのけた。」
十文字「(レスを羽交い絞めにする)やめてください!!」
透明猫・レス「離せ!離してくれ!!」
ナレーション「十文字の声も耳に届かないのかレスは理性を失っていた。レスの目がだんだん赤みを増していた。タマと初めて出会って間もなくの頃、タマのシンボルストーンが妖怪に奪われた時、レスが怒りを爆発させた時の目と同じだった。」
透明猫・レス「ウウウウ…ウオーーーッ!!」

風船猫・タマ「僕にはレスの声が聞こえる…」
ナレーション「ネミミ先生を忘れるわけじゃない。けれどいつも傍にいる人達の声を聞いて、今しっかりと歩き出さなくてはいけない。頭ではわかっているのに、タマは先生の手をじっと見つめる。」
風船猫・タマ「僕、生まれてきてよかったと思ってる。ネミミ先生に命を助けてもらって生きてる今も…生きていて嬉しい。だから、僕…頑張るよ…」
効果音「パァァァン(光が弾け飛ぶ音)」
風船猫・タマ「さよなら…先生」
ナレーション「ネミミの姿をしていた光は別れの言葉と共に弾け飛んで消える。消える瞬間、ネミミは笑っているようにも見えた。」
ミヨ(ギンの姪)「(龍が消えた)」
ナレーション「龍が消えたと同時にタマの体はまっさかさまに落ちていく。タマ本人は気絶したように目を閉じていた。ミヨは手のひらから巨大な蝶を生み出してタマの体を乗せるとそのまま洞窟の奥まで飛ぶ。」
ミヨ(ギンの姪)「(この奥を抜けるとそのまま外に出られるわ)」
ナレーション「今までの修行者は自分の心の奥にある誘惑に負けて魂を奪われたものもいる。龍に勝つのは精神力の力…PTを手に入れるには己自身の誘惑に打ち勝つことだと言われていた。それがもっとも強いPTを得るだろうと。」

ミヨ(ギンの姪)「(もうすぐお別れね)」
ナレーション「タマは夢の中でミヨの声を聞いていた。ミヨは少し離れた場所にいた。タマはミヨの傍に行こうとするが体が動かない。」
風船猫・タマ「ミヨさんと友達になりたい…もっと、ミヨさんのこと知りたいんだ…」


ミヨ(ギンの姪)「(ごめんなさい…もうそれは叶わないの…仲良くなれるといいわね、あの子と)」
ナレーション「ミヨはタマを草むらに降ろすと、雨風の空に向かって手をあげる。すると雲に覆われた空はミヨの周囲だけ明るく雲がさけていく。」
風船猫・タマ「ミヨさん…なにをするの?」
ミヨ(ギンの姪)「(私はずっとこのときを待っていたのかもしれないわ。私を天に上げてくれる貴方を。貴方の今の力で私を天に上げて欲しい)」
風船猫・タマ「なにいってるのか判らないよ…ミヨさん、みんな心配してるから帰ろうよ?」
ミヨ(ギンの姪)「(私の帰る場所なんてどこにもないの。…もっとあなたに早く会えてたら…私は貴方と友達になれたのに)」
ナレーション「それは夢の続きのようにも見えた。朦朧とした頭で起き上がりながらミヨのほうを見る。ミヨは涙を流しながら、それでも笑顔いっぱいにタマを見つめていた。」
ミヨ(ギンの姪)「(私の力では…この杭を外せない。ギン兄さんにも、誰にも私の胸に刺さった杭を抜けなかった)」

ナレーション「ミヨが涙を流しながら胸を押さえている。胸からは血が滲み出て、今までは見えなかった長い杭がはっきりとタマには見えた。」
ミヨ(ギンの姪)「(…これが見えるでしょう?ずっと私は苦しんできた…この杭が苦しくて。天に上がれなかった)」
風船猫・タマ「助けてあげるよ!!」
ナレーション「タマは両手を天にかざした。そして天を仰いだ。ミヨとの別れが辛くて涙が出そうだったが、明るくこう叫んだ。」
風船猫・タマ「パーフェクト・トランスフォーム・ウェポン・パワー、ライド・オン!!」


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