第3章・第11話「魔の洞窟」


炎猫・フレイヤ「ケインがソレイユの情報を掴んだ時、彼女に捕まりました。もう時間はありません。早くみんなで下山しましょう。」
ナレーション「その言葉を聞いてレスはタマの方を見る。タマは俯いたまま辛そうにしている。」
ギン(十文字の元上司)「明日まで待てないか。急いでも約束の日までは姿を見せないだろう。PTを取得しなければ丸腰で敵につっこむようなものだ。」
炎猫・フレイヤ「でも!そうしてる間にケインが!!(身を乗り出して叫ぶ)」
風船猫・タマ「僕のせい…なのかな」
ナレーション「タマの呟いた一言でフレイヤが言いかけた言葉をのみこんで黙る。」
ミヨ(ギンの姪)「(大丈夫。時間は戻らないけど、やり直せるチャンスは生きてればいくらでもあるわ)」

風船猫・タマ「(驚いてミヨの方を見る)ミヨさん…僕はどうしたらいいのかな。どうやってやり直せばいいんだろう…」
ミヨ(ギンの姪)「(私が力を貸してあげる)」
風船猫・タマ「どうやって?」
ナレーション「この会話は他の誰にもわからない心の会話だった。ミヨがタマの頭に直接語りかけるので他には聴こえない。にっこりと微笑んでミヨはある条件を出した。」
ミヨ(ギンの姪)「(この近くに洞窟がある。修験者が修行のために使っている『魔の洞窟』と言われるところがあるの)」
風船猫・タマ「…魔の洞窟?」
ミヨ(ギンの姪)「魔の洞窟は一歩入るとシンボルストーンの魔力が利かなくなる場所なの。短時間でPTの能力を引き出すにはこの場所しかないわ)」
ナレーション「タマは自分の故郷の『魔物の崖』を思い出していた。あそこも同じように魔力が利かない場所である。ミヨは追い詰められた状況を作ることによって力を引き出そうとしているのだろうか。」
ミヨ(ギンの姪)「(私が連れて行ってあげる)」


透明猫・レス「タマ?(レスが2人に気がついて呼びかける)」
ミヨ(ギンの姪)「(今夜12時に松の木の下で待ち合わせしましょう。誰にも言っては駄目よ)」
ナレーション「タマはミヨの言葉を頭で聞きながらレスになんでもないような顔をした。レスは怪訝な顔をして2人を見ていたが会話は聴こえていないみたいだった。」
十文字「皆さん、明日の夕方に下山します。PTをもし取得できなくてもタマさんが勝つ方法はあるかもしれない。その時はその時で話し合いましょう。」
ギン(十文字の元上司)「…(難しい顔をして黙り込む)」

雷猫・サンダー「いざって時は俺達全員で戦えばいいじゃないか」
十文字「そういう状況にならない為にケインさんを人質にとったのかもしれません。もしこちら側が約束を破ればケインさんは…」
ギン(十文字の元上司)「もし逃げられたらどうする。また誰かの命が奪われるかもしれない。安易に考えるのは命取りになるぞ。」
ナレーション「サンダーは意見された事で自分が子供だったと自覚して落ち込むと同時にいらだった。」
雷猫・サンダー「ケインが捕まったのが悪いんだろうが!!」
ギン(十文字の元上司)「だったら…もし人質がお前の母親だったとしても悪いといえるのか?自分の考えが通らないからと言って怒ったところでなにも解決しない。此処に来たのはお前の修行の為でもあるんだぞ。」
雷猫・サンダー「…」

風船猫・タマ「サンダー、みんな…ケインが捕まったのは僕のせいです…これ以上、僕に関わったらみんなにも危険が及びます…だから…!」
炎猫・フレイヤ「タマさん!」
風船猫・タマ「僕がまいた種は自分で刈ります…お世話になりました…」
ナレーション「タマはうっすらと微笑を浮かべた。そして、すっくと立ち上がり、みんなに背を向け勢いよく飛び出していった。」
効果音「ゴォオオオオー(風の音)」
透明猫・レス「タマ!!(追いかけていこうと玄関に向かう)」
ナレーション「レスがタマに追いつくことはなかった。すでにタマの姿は消えている。そしてミヨの姿も消えていた。」


ギン(十文字の元上司)「あいつ…どこに行く気だ」
十文字「(開け放たれた扉を閉める)今回のことで責任を誰よりも感じているのはタマさんです。皆さん、言い争う前に落ち着いてください。」
ナレーション「十文字の一言でその場の全員が黙って座り込んだ。レスはタマがいなくなってしまう不安を感じている。サンダーは自分の失言に恥ずかしさを感じていた。」
ギン(十文字の元上司)「ミヨも消えたな…」
透明猫・レス「そろそろミヨさんの正体を聞きたいんだが…」
ギン(十文字の元上司)「気がついていたか。そうか。もう話したほうがいいかもしれないな。」
ナレーション「そういってギンは懐から一枚の写真を出す。そこには綺麗な17〜8歳の女性が写っていた。その女性はミヨにそっくりだ。」
ギン(十文字の元上司)「これが生前のミヨの姿だ。今の姿は仮の姿で…わしにもどうして子供の姿に見えるのかわからん。」
透明猫・レス「どういうことだ?」

ギン(十文字の元上司)「ミヨはこの時代の人間ではない…本当はこの世には居るはずのない人間なのだが…」
ナレーション「いつものギンと違い歯切れが悪い。十文字は仏像の近くにあった古い帳面を持ってきた。」
十文字「この寺はずっと昔に起こった水害で亡くなった方を供養するために、サンダー坊ちゃんのひいおじいさまが建てたものです。これはその水害で犠牲になった方の名簿です。」
ナレーション「水害の犠牲者が数多く書かれた帳面の最後に人柱になった人の名前が記載されていた。そこにミヨの名前が記されている。」
ギン(十文字の元上司)「ミヨは。婚約者を水害で失ってから自分自ら人柱になるのを志願した…『私はこうなる為に生まれてきたんだ』といってな。ミヨが人柱になって以降、水害はなくなったんだがミヨの魂は…魂はそのまま」
ナレーション「ギンが声を詰まらせる。俯いた顔から涙が帳簿に零れ落ちるとあとは崩れるように床に手をついて頭を下げる。」
ギン(十文字の元上司)「わしがミヨの婚約者と一緒に水害を食い止めようと川にいったから…あいつは死んだ。わしが協力してくれといわなければ…あいつは!あいつは今も生きていたはずなんだ。ミヨの婚約者を殺したのはわしかもしれないんだよ。」
透明猫・レス「(タマと同じか)」
ギン(十文字の元上司)「そしてミヨはわしの姪ではなく…妹だ」


効果音「ザァァァァァアアアアー(雨の音)」
風船猫・タマ「松の木の下ってここでいいのかな?」
ミヨ(ギンの姪)「(早かったね)」
ナレーション「背後からタマの目を隠しながらミヨはからかってきた。気配をまるで感じさせないことに違和感を覚えたタマだったがミヨの微笑をみたらどうでも良くなった。」
風船猫・タマ「いこうか?」
ミヨ(ギンの姪)「(風船猫さん)」
風船猫・タマ「どうしたの…?」
ミヨ(ギンの姪)「(私が怖くないの?)」
風船猫・タマ「そんなことないよ…何でそんなこと聞くの?」
ミヨ(ギンの姪)「(…あなたが初めてよ、私を先入観なしで見てくれたの)」

ナレーション「このとき、タマはミヨの言っている意味が分からなかった。そして、疑問に思っていたことをミヨに訊いた。」
風船猫・タマ「どうして、『魔の洞窟』のことを僕だけに教えてくれたの?」
ミヨ(ギンの姪)「(これまで修行にきた人は殆ど私の姿を気味悪がったわ。私に触れてくる人なんていなかった。微笑みかけてくれる人も…誰も)」
風船猫・タマ「山を降りたら友達がたくさんできるよ?僕だってたくさんの人と仲良くなったしみんな親切だからミヨさんもおいでよ。」
ミヨ(ギンの姪)「(駄目よ。あなたに教えたのは私自身の決別でもあるの。この地に、自然に。PTを取得したら私を助けて欲しいの)」
風船猫・タマ「(僕がPTを使えたらミヨさんを救えるのかな…)」
ナレーション「タマにはなんのことだか判らないままだったが、ミヨが救いを差し伸べて欲しいのが判った。きっと何かの病気で山にいるんだと、そう思った。」

効果音「ビョオオオオ…」
ミヨ(ギンの姪)「(あそこが『魔の洞窟』よ)」
ナレーション「タマとミヨの目の前には大きな洞窟があった。黒々とした穴はまったく先が見えず、今にも2人を吸い込みそうであった。」
風船猫・タマ「あれ?ミヨさん…!?」
ナレーション「振り返るとさっきまでいたはずのミヨの姿はすでになかった。」
効果音「オオオオ…」
ナレーション「穴からは何かのうなり声のような音が聞こえてくる。生暖かい風が流れている。得体の知れない雰囲気にタマは一瞬のまれそうになったが、自分を奮い立たせた。」
風船猫・タマ「(虎穴に入らなければ、虎子は得られない…この洞窟に入らなければPTは会得できない!)」
ナレーション「タマは勇気を振り絞って、『魔の洞窟』に飛び込んだ。またもや、タマは奇声を上げていた。」


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