第2章・第7話「大掃除」

効果音「チチチチチ…(小鳥の声)」
十文字「…皆さん、おはようございます…い、イデデデデ…」
ナレーション「次の朝、十文字は頭を押さえながら現れた。ギンに酒を無理やり飲まされたお陰で十文字は何度もトイレに行く羽目になった。」
風船猫・タマ「大丈夫?十文字さん」
ギン(十文字の元上司)「十文字は酒に弱いのが弱点だな。さぁ朝食にするか。」
十文字「皆さんの食事は外に用意しています…っイデデデ…(またもや頭を押さえる)」


ナレーション「皆が外に出ると外にはテーブルが用意されているが朝食らしきものが見当たらない。3人が首を傾げて十文字を見るとギンが声を張り上げて言った。」
ギン(十文字の元上司)「これから大掃除を始める。一番早く掃除を終わらせたものはこのイスに座って食べれるわけだ。ただしイスに座れるのは1人だけになる。」
雷猫・サンダー「イスは3人分あるじゃないか(テーブルの方を指差す)」
ギン(十文字の元上司)「(十文字に合図して2人でイスに座り始める)これはわしらのイスだ。」
十文字「廊下の雑巾がけと仏像の埃落としとトイレ掃除…他にもやることはたくさんありますから頑張ってください。」
風船猫・タマ「もしイスに座れなかったらご飯は抜き?」
ギン(十文字の元上司)「ま、そういうことだ。(腕を組んで頷く)」

十文字「揚げ出し豆腐・出し巻き・鮭、ベーコン、ハムゆでたまご・牛乳・レタスとソーセージ炒め・納豆…今から味噌汁も作ります。(テーブルに朝食を並べていく)」
ギン(十文字の元上司)「早くしないとわしが全部食うぞ(もぐもぐとすでに食べている)」
風船猫・タマ「あ…タイヤキ!!」
ナレーション「タマの目の前にはおおぶりのタイヤキがあった。しかも、タマの行きつけのタイヤキ屋のものだった。」
風船猫・タマ「あそこのタイヤキ、しっぽまであんこが入っていているんだよ…」
ギン(十文字の元上司)「ほう、お前もなかなかの通だな。あそこの今川焼きはわしも好きで買っているからな」
雷猫・サンダー「2人にしか分からない会話をするな!!」


十文字「制限時間は20分です。それでは…3…2…1(時計を見ながらカウントしていく)」
ギン(十文字の元上司)「バケツの水と雑巾はそこに用意してあるからそれを使えばいい。」
十文字「…0!スタート!!(笛を鳴らして手をあげる)」
風船猫・タマ「うおおおおお!タイヤキいいいいい〜〜!!」
ナレーション「タマは雑巾をろくに絞らずに廊下に飛び出した。廊下はとてつもなく長かった。ここで100m走が出来るのではないかと思うくらい長かった。」

透明猫・レス「雑巾にバケツ、ハタキも借りるぞ(タマの後に続く)」
ナレーション「スプレーとスポンジが残るとサンダーはそれをもって後に続いた。タマは急いでいて何も気がつかなかったが「用具は自分で選ぶように」とバケツに達筆で張り紙がしてあったのだ。」
風船猫・タマ「うおおおお〜!!(全速力で廊下の雑巾かけをする)」
ナレーション「タマの雑巾かけは…バケツも用意してなかったために真っ黒になった水浸しの雑巾が最悪な結果になる。」
風船猫・タマ「あぁ!せっかく拭いたのに!」
ミヨ(ギンの姪)「(ニコニコ笑って雑巾をバケツにいれて絞る仕草をする)」
ナレーション「ミヨが障子からタマの様子を覗いてアドバイスする。そんなミヨの姿を見たら昨日のレスの言葉を思い出したタマだった。」
風船猫・タマ「ミヨさんはここに1人っきりで淋しくないの?」
透明猫・レス「私語厳禁だぞ。今は朝食が先だ。(背後から現れたレスがタマの頭にバケツを乗せる)」
ギン(十文字の元上司)「あータイヤキはうまいなぁ(わざとらしく大声で聞こえる様に連呼する)」

風船猫・タマ「タイヤキ…早くしないと全部食べられる!」
ナレーション「タマは再び掃除に取り掛かった…が、レスが頭にバケツのせていたのを忘れ、派手にこけてしまった」
効果音「ガシャガシャーン!!」
雷猫・サンダー「はぁ…(呆れてタマ達の横を横切る)」


ナレーション「サンダーはスプレーで拭きかけながらぴかぴかに磨いていく。『お先』と言わんばかりに早々と作業をこなす姿はタマには意外に見えた。」
風船猫・タマ「サンダーもタイヤキを狙ってるんだ…きっとそうだよね」
ナレーション「タマは雑巾を絞ると何枚かの雑巾の端を結んで繋げる。なにをしだすのかと見守るレスの横でタマは巨大な雑巾を作り出した。」
風船猫・タマ「うりゃあああああああ!!!!(叫び声をあげ、雑巾を全身に巻いて回転する)」
雷猫・サンダー「こ…こっちにくるなー!!」

ギン(十文字の元上司)「十文字、なにやら叫び声が聞こえるな。」
十文字「坊ちゃん達の気合が伝わってきます」
ナレーション「そういってるうちに残り時間は15分。外のマイナスイオンを楽しみながら食後のお茶を楽しむギンと十文字は久しぶりの休暇だと笑いあっていた。」
ミヨ(ギンの姪)「(タマとサンダーの姿を見ておなかを抱えて笑っている)」
透明猫・レス「先にいくぞ」
雷猫・サンダー「お前はいつもどうしてそうなんだ!」
風船猫・タマ「みて、ミヨさんが笑っているよ!あ、あははははは…」


ナレーション「雑巾の上に倒れこんだ二人の横をレスが通り過ぎる。サンダーとタマはそれに気がつかずに言い争いをしていたが我に返って走り出す」
透明猫・レス「今度はこれか」
風船猫・タマ「なにこれ?」
雷猫・サンダー「俺の先祖が作った仏像だ。」
ナレーション「3人が廊下の掃除を終えて辿りついた部屋は仏像の置かれた部屋だった。雷猫一族の先祖が作ったとされる仏像はサンダーの曽祖父がここに運び込んだ大切なものだとサンダーは解説した。張り紙には「仏像を丁寧に磨くように」と書かれている。」
風船猫・タマ「げぼっごほっ(埃を吸って咳き込む)」
透明猫・レス「これが何年分の埃なのか考えたくないな」
ナレーション「仏像の顔すらわからないぐらい埃が積もっていてタマの白い体は掃除のせいで灰色になっている。それをサンダーがからかい、タマが相手をしてレスがうんざりする、その繰り返しで作業は終わった。」
ギン(十文字の元上司)「あの仏像の掃除もやっかいだったが今年は楽が出来た。(お茶をすすりながら)」

十文字「残り時間もあと僅かになりました(時計を見ながら待っている)」
風船猫・タマ「うおりゃあああああ、タイヤキ〜!」
ナレーション「目指すはイスのみになった。3人はイスを死守するために死に物狂いになっていた。」
雷猫・サンダー「朝食はご飯と味噌汁って決まってるんだよ!」
透明猫・レス「パンに塗るのはマーガリンに限る!」
ナレーション「3人は譲れない主張を叫びながら、フットボールのタッチダウンに向かう選手よろしく十文字の許に突進してきた。」
一同「ぎゃああああ〜」
効果音「ガシャーン!」


十文字「勝敗は決まりました」
ナレーション「テーブルが倒れたにも関わらず料理はしっかりと両手に持っている十文字が勝敗の結果をいう。ギンも同じく料理を持ってニヤニヤと勝者に皿を渡す。その勝者とは…」
風船猫・タマ「え…僕…勝ったの??」
透明猫・レス「いや、同時だったんだ、3人とも…」
雷猫・サンダー「こういう場合、どうなるんだよ?」

ギン(十文字の元上司)「3人に朝食をあげたいが…肝心のイスが壊れたのでは勝敗は藪の中だ。わしはいっただろう「イスに先に座ったものが勝ちだ」それ以外は敗者…つまりは」
ナレーション「ギンは次の瞬間、皿の料理をすべて大口あけて食べてしまった。」
効果音「ごっくん(タイヤキすべてを飲み込む)」
ナレーション「さっきの衝突で十文字のイスもギンのイスも破壊されたはずだが空席だったイスにギンが腰掛けたので結果はギンの勝ち。3人は納得がいかずに怒り出す。」
風船猫・タマ「ひどいよ、楽しみにしてたのに!」
透明猫・レス「食い物の恨みは恐ろしいからな」
雷猫・サンダー「朝食抜きの労働…(バタンとその場に倒れる)」
ナレーション「その場に倒れたサンダーは十文字に味噌汁だけでも飲ませろと文句をいい始める。タマはタマでタイヤキの尻尾でもたべたかったと悔しそうに皿を見つめる。レスは背中を向けて遠いところを見始める。」

ギン(十文字の元上司)「もしコノ3人のうちで誰か1人だけが美味しい思いをしたらあとの二人はどうなる?わしの目には無意識に3人ともスピードをあわせて走ってたように見えたが気のせいか?」
十文字「無意識でも相手を気遣う気持ちが戦いにとっては基本なんです。勝敗や得る物にこだわらず相手を尊重する気持ちを忘れないで欲しいからこうして試しました。」
一同「…」
ナレーション「十文字の言葉に3人は黙り込んでしまった。掃除中、確かに思い当たる節があった。2人の修行の意図を頭で納得しながらも、空腹には勝てないのか3人はその場でしばらく動けなかった。」


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