第2章・第6話「天を仰ぎし者」

風船猫・タマ「じゃあいくよ!(鞠を思いっきり高く蹴る)」
雷猫・サンダー「高すぎだ!どこまで飛ばす気だ!!(鞠を追いかけてレスにさらに階段を上りながらパスする)」
透明猫・レス「これを100回か…かなりきついな(階段の上まで走ってるタマに向けてさらにパスする)」
風船猫・タマ「慣れたら楽しいかもね…サンダー!!パスッ!」
ナレーション「3人は何度か失敗をしながら次第に息がぴったり合うようにパスできるようになった。それを見てギンはにやりとする。」

ギン(十文字の元上司)「十文字、あれを見ろ。1人だと力をセーブする必要もないが相手がいれば相手の呼吸に合わせて力をセーブする必要がある。アクセルが強くてもブレーキが利かない力なら持ってても意味がないからな。」
十文字「なるほど。(感心してサンダーを見守る)」
ナレーション「およそ4時間後。3人はふらふらのぼろぼろになりながら最後の階段を上がって終了した。タマが数を数えていたが89回あたりから曖昧になって代りにレスが数えていた。」
風船猫・タマ「100…回…っ!!(よれよれになって傍にいたレスにすがる)」
透明猫・レス「途中で…タマが落とし…たのを数に入れたら…109…回…(むせて咳が出る)」
雷猫・サンダー「帰り…たい…(その場に倒れる)」


ナレーション「ようやく、タマたちは食事にありつけた。サンダーはすでに食欲を失っていたが、タマはご飯を次々おかわりしていた。」
風船猫・タマ「おかわり!」
雷猫・サンダー「(あいつの胃袋、どうなってんだよ…)」

風船猫・タマ「そういえば…ミヨさんは?(ご飯を食べながらその場にミヨがいないのに気がつく)」
透明猫・レス「(黙々とご飯を食べ終えてお茶を飲む)今何時だと思っている?」
十文字「ミヨさんは寝られました。この寺には人が滅多に訪れないのでとても喜んでいましたよ。」
ナレーション「3人が案内された寺は金堂の立派な寺だった。今時珍しい木造建築の寺で欄間には見事な龍神の細工が飾ってある。」
ギン(十文字の元上司)「ヒノキをここまで運んで作られた寺だ。当時の職人の技術の素晴らしさが滲み出てる…ま、説明してもサンダー坊ちゃんによさはわからんと思うがな。」
ナレーション「サンダーにとってギンが『坊ちゃん』というのは嫌味を言う時だと知っている。明らかに十文字の真似をしているが言葉にはしっかりと毒が入っているのをサンダーはうんざりしながら聞かされて育ったからだ。」

雷猫・サンダー「ごちそうさま(席を立って寝室に向かう)」
ギン(十文字の元上司)「しっかり寝ろよ。明日は早朝の大掃除があるからな。ハッハハハ!(一升瓶を片手に十文字のコップに酒を注ぐ)」
風船猫・タマ「僕も寝ようかな」
ナレーション「この寺はサンダーの曽祖父が修行の為に建てた寺でもあるが水害で亡くなった人を供養する為に建てられた寺でもある。そんなギンの話もあまり興味なかった2人は早々に寝ることにした。」


風船猫・タマ「…」
透明猫・レス「眠れないのか?」
ナレーション「タマは広い天井をじっと見つめていた。広い部屋の中が暗闇の中で僅かにぼんやりと見える。」

風船猫・タマ「これからのこと…」
透明猫・レス「ん?(タマのほうを振り向く)」
風船猫・タマ「これから先、僕は…強くなれるのかな?心も体も。」
透明猫・レス「…自分で歩く道は自分で選ぶんだ。選ぶほど選択肢のない道かもしれない。けれど、わしが選んで歩いた道の中で…タマに会えて良かったぞ。」
ナレーション「生き方の選択肢は多いと誰かが言っていたが、それは振り返れば限りある選択肢の中でいつも悩みながら選び取った道だとレスは思う。これから先も強くなれるかは自分の努力次第だ。タマは悩んでここを選んだ。それでいいとレスは言う。」
風船猫・タマ「あのね…ありがとう…おやすみ…レス(小さい声でレスに御礼をいう)」


効果音「ギシギシ…(床が軋む音)」
風船猫・タマ「?あの音なんだろう…レス!(起き上がってレスの肩を揺さぶるがすでに深い眠りに入ってる)」
ナレーション「音の主…それはシルエットからしてギンとミヨのようだった。廊下で二人が立ち話をしている。タマはいけないとは思いつつも聞き耳を立てた。」
ギン(十文字の元上司)「わしの力ではお前を天に上げられない。不甲斐ない兄かもしれないがここにずっといてくれ。」
ナレーション「当然ミヨの声は聞こえないが肩を揺らして顔を手で覆っているシルエットが見えた。きっとギンさんが泣かせてるんだとタマは思った。」
風船猫・タマ「(姪って言ってなかったけ…変だな)」


ナレーション「ギンの言動を不審に思ったタマはもっと近づこうと試みた。その時、足元にあった枕につまづいて転倒した。」
効果音「ドオッ、ズデーン!!」
ギン(十文字の元上司)「ん?」
風船猫・タマ「チュー、チュー…」
ナレーション「タマは慌ててねずみの鳴きまねをした。ギンは寝室の方をじっと見つめていたが、再び視線を元に戻した。」

ギン(十文字の元上司)「最近のねずみは派手な音を立てるもんだな…?!」
効果音「ダダダダッ(ミヨの走り去る音)」
ギン(十文字の元上司)「待て!(追いかけるギン)」
風船猫・タマ「…どういう意味だろ?」
透明猫・レス「(布団を被っていたレスが起き上がる)気がつかなかったか?ミヨさんの気配で。」
風船猫・タマ「ね…寝たふり??」
透明猫・レス「大きなネズミだな」

ナレーション「どうやらレスはタマが気がつくより先にギン達が来るのをわかっていたらしい。薄目を開けてタマの行動も見たというからタマは恥ずかしくなった。」
風船猫・タマ「(笑い出すレスに枕を投げる)ギンさんってなにか隠してない?」
透明猫・レス「ミヨさんはこの世に生きてない娘だ」
風船猫・タマ「もしかして…」
透明猫・レス「話は明日だ。おやすみ(布団を再びかぶる)」
ナレーション「レスの言葉が気にかかったが、タマは布団をかぶった。向こうから十文字のいびきが聞こえる。ギンに酒に付き合われて、もともと強くない十文字は泥酔してしまったのである。」


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