第1章・第2話「形なき物を変える技」

ナレーション「女の叫びと同時にレスに剣の攻撃が来る。レスは避けきれずに左耳を負傷したが、それでもタマを守ろうとレスは立ちふさがる。」
炎猫・フレイヤ「一体何の騒ぎですか…?タマさん?!」
ナレーション「騒ぎがするからとタマ達の元に駆けつけてきたのはフレイヤだった。驚いて俯いたまま震えるタマの傍に駆け寄るがタマにはフレイヤの姿が見えないようだった。それはいつものタマではない。」
ソレイユ「もう1人いたか」
効果音「バサバサ(天馬が羽をばたつかせる音)」
ソレイユ「一旦は引くか。だが、次は必ず…」


ナレーション「フレイヤの後からサンダーやケインが騒ぎを聞きつけてやってくる。その気配を感じ取ったソレイユは一旦は天馬に乗って去った。」
炎猫・フレイヤ「大丈夫ですか?」
風船猫・タマ「(こぶしを握り締めながら首を横に振る)」
透明猫・レス「わしは大したことない…それよりタマが…」
風船猫・タマ「レス、僕のせいで…!」

ナレーション「必死にタマを庇うレスの左耳からは血が滴り落ちていた。タマはそれを見てますます動揺していた。」
雷猫・サンダー「ひどい怪我だ!俺のうちで十文字に手当てをしてもらおう!」


ナレーション「5人はサンダーの家のサンダーの部屋にいた。彼の父親は雷猫一族の長で、サンダーはその息子だった。レスの横には長のおつきでありサンダーの教育係の十文字が手当てをしていた。」
十文字「傷は思ったより深くありませんよ。しっかり止血していれば大丈夫です。」
風船猫・タマ「よかった…」
効果音「タマは、レスの傷がたいしたことがないと分かり安堵の表情を見せた。そして、ふらふらと部屋を出て行こうとしたそのとき、レスが彼をとめた。」

透明猫・レス「どこ行くんだ?タマ?」
風船猫・タマ「1人になりたいんだ…ごめん」
炎猫・フレイヤ「タイヤキ食べませんか?今日頼まれてたのを買ってきたんです。」
ナレーション「タマを引きとめようと紙袋の中からタマの好きなタイヤキを出そうとする。だけどタマはチラッと見ただけで反応もなく背を向けた。」
風船猫・タマ「すぐに戻ってくるから」


効果音「ザー(雨の音)」
ナレーション「外はいつのまにか雨が降っている。タマは雨の中をただ1人黙って歩いていた。涙を隠すのを手伝うように雨がタマの顔を濡らす。」
風船猫・タマ「…(ふと木の上を見上げる)」
ナレーション「あの時助けた雛は一匹だけ巣の中で鳴いていた。後の兄弟達は巣から落ちてすでに死んでいる。親鳥を亡くした雛の運命。タマは一匹だけ生き残った雛を助けると大切に雨に塗れない様に手の中に抱きしめて走る。」
効果音「ザァァァー(激しい雨の音)」
ナレーション「以前にも同じことがあった。巣から落ちて死んでしまった小鳥を生き返らせようとして、先生に叱られた事があった。」

ネミミ(タマの恩師)「タマ…生き物を生き返らせる魔法はだめだといったはずだ…」
風船猫・タマ「…なぜ生き返らせてはいけないの?」
ナレーション「ネミミは困ったような顔をしてタマの頭を優しく撫でた。まっすぐに見上げるタマの瞳は「何故?」と訴えている。」
ネミミ(タマの恩師)「魔法で生き返ったら…皆精一杯生きようとしない。今ある時間を大切にしないかもしれない。死んだものを自分の勝手で「可哀想だから」と生き返らせるのはしてはいけないんだよ。だから禁断の魔法とされて封印されている…」
風船猫・タマ「先生?」
ナレーション「非情になれるのは小鳥だからかもしれないとネミミは思っていた。もしこれが愛するものだったら誰でも「生き返らせたい」と願うだろう。それが自分の命を投げ出す結果になっても。ネミミは暗い考えを消すようにタマに笑いかけた。」


効果音「バシャバシャ(水をかき分ける足音)」
風船猫・タマ「…飛べるまで一緒にいようね…(手の中の鳥に話し掛ける)」
ナレーション「ずぶぬれになったタマはそれからみんなの元に戻り雛の親代わりとして世話をしていた。最初は元気のなかった雛も数日もたてばタマに懐くように元気に鳴くようになる。」
雪猫・ケイン「タマに似てそいつ大食いだな。名前は付けたのか?」
風船猫・タマ「レスが「名前付けたら別れる時に辛いだろ」って。どうしてだろう…」


ナレーション「タマとケインが小鳥のことを話しているころ、レス、サンダー、フレイヤは難しい顔をして考え込んでいた。レスが傷を追った際、あの覆面の女が発動した剣のことが気がかりだったからだ。」
透明猫・レス「わしは信じたくないのだが、ああゆうことが出来るのはシンボルストーンを使えるものにしか出来ん…」
炎猫・フレイヤ「ええ…シンボルストーンを使って武器に変える技なんて…」
ナレーション「2人は黙り込んでしまった。しばらく間をおいて、サンダーが突然、独り言のようにつぶやいた。」
雷猫・サンダー「ひょっとして、『パーフェクトトランスフォーム』なのでは…」
透明猫・レス「…パーフェクトトランスフォーム…?」
雷猫・サンダー「シンボルストーンを具現化させて武器にする技だ。雷猫一族ではそういう技を習得することを義務付けられている。」

炎猫・フレイヤ「また狙われる可能性があるなら習得するのを考えたほうがいいですね。」
透明猫・レス「厄介な奴を敵に回してしまったな…。」
雷猫・サンダー「俺にいい考えがある。十文字と相談してからまた連絡する。タマたちにも伝えておけ。」
炎猫・フレイヤ「タマさんは戦う気が無いみたいですよ。ああやって小鳥の世話の話はしてるけれどその話題になるのを避けてるような…。」
透明猫・レス「…タマが1人の時に狙われたら守りきれない。(厳しい表情になるレス)」
ナレーション「話題にされているタマにソレイユと戦う意思はなかった。ソレイユのことは話題にすれば黙り込んでどこかに行こうとする。」
炎猫・フレイヤ「戦うのではなく身を守るだけでいいんです」
透明猫・レス「わしがタマを説得してみる…」
ナレーション「レス達が会合していた場所は遺跡の傍の草原だった。ここは古代遺跡の概観を守るために居住区とは離れた場所に位置する人があまり訪れない場所だ。」


透明猫・レス「(もし戦いになれば…犠牲者がでる)」
ナレーション「立ち去るサンダーの背中を見送りながらレスはタマを説得する方法を考えていた。罪悪感が油断になり命を奪われるかもしれない。タマが今回のことで一番傷ついてるのはレスがよく知っている。」
透明猫・レス「『ソレイユ』か…(女の名前を呟く)」


第1話に戻る 過去ログに戻る 第3話に続く

本・漫画・DVD・アニメ・家電・ゲーム | さまざまな報酬パターン | 共有エディタOverleaf
業界NO1のライブチャット | ライブチャット「BBchatTV」  無料お試し期間中で今だけお得に!
35000人以上の女性とライブチャット[BBchatTV] | 最新ニュース | Web検索 | ドメイン | 無料HPスペース