第3章・第9話「天使と2人の少女」

効果音「バシャッ、バシャッ、バシャッ!」
ナレーション「爆弾予告のニュースが報道されていたちょうどその頃、Haloが所属する事務所の前では人だかりが出来ていた。カメラのフラッシュが容赦なく事務所の人間に降りかかる。」
レポーター1「今、「Halo」が所属する事務所「ホーリー」に来ています。1週間後に行われる「Halo」のコンサート会場に爆破予告の手紙が送られていたニュースを聞いたファンからの電話が事務所に殺到しているそうです…。」
ナレーション「レポーターらの前に事務所の社長が現れた。レポーターはマイクを次々と突きつけ、事の真相を聞きだそうと躍起になっていた。」
レポーター2「たった今、「シリウス」に爆破予告の手紙が送られてきたそうですがご存知ですか?」
事務所の社長「それについては今、問い合わせている最中ですので…」
レポーター3「事務所の方に恨みがある人間と思われる犯行との報道もありますが、心当たりはありますか?」
天野翔(Haloマネージャ)「それに関しては今はお答えできません…」
ナレーション「レポーターの質問攻撃から社長を守るように一人の男が立ちふさがった。彼は「Halo」のマネージャーの天野翔。もともとは俳優をやっていたのだが、Haloがデビューする頃からマネージャー業に転向したらしい。業界の中でもかなりの敏腕らしい。」

小原昇矢「…」
ナレーション「外の騒動を昇矢と他のHaloのメンバーは事務所の奥から覗いていた。Haloの中で唯一の女性であるメンバーが昇矢に声をかけた」
美羽(みう・Haloベース)「こうなることは分かっていたけど、えらいことになったわねぇ…」


宇宙(そら・Haloギター)「昇矢、どうだ、犯人の目星はついたのか?」
ナレーション「緑の長髪の髪の宇宙(そら)が話しかけた。昇矢はしばらく外を眺めていたが、ようやくメンバーのほうを向いた。」
小原昇矢「爆破予告の手紙を送った人間は典子くんに調べてもらっている…」
輪(りん・Haloドラム)「だけど、社長はどう判断するんだろう…もし、中止になんてことになったら…」
ナレーション「メンバーの中で一番長身の輪(りん)が不安そうにつぶやいた。輪の言葉に昇矢は目を大きく開いた。」
小原昇矢「そんなことはさせない…その日は『あの子』と約束した大事な日だ…それにあの子だけじゃない、多くのファンが僕らの歌を待っているんだ…」
ナレーション「昇矢はさっきから天井の方をちらちら眺めている。彼は突然立ち上がり、天井に向かってこうつぶやいたのだ。」
小原昇矢「そこにいるのは分かっている…もう、隠れる必要はないから降りておいで…エル君とルビ君?」
エルとルビ「!!」
ナレーション「昇矢の言葉に他のメンバーはいっせいに天井の方を見た。エルとルビが驚いた様子で天井の方に浮かんでいるのが見えた。」

悪魔・ルビ「あんたら、俺たちの姿が見えるのか…?」
小原昇矢「見えるも何も僕は人間じゃないから…典子くんから聞いていると思うけど…」
ナレーション「昇矢は人志たちが初めて彼と会ったときと同じ笑顔でエルたちを見ていた。他のメンバーも驚く様子もなく、2人を感心して眺めていた」
美羽(みう・Haloベース)「へえ、あんたらが16年前の落雷にあった天使と悪魔かい…」
宇宙(そら・Haloギター)「どんな奴らかと思ったけど、意外と普通なんだな」
輪(りん・Haloドラム)「こいつらが雷に撃たれた後に転生人間が生まれたって…へぇ、長生きはするもんだねぇ…」
天使・エル「あの、あなた達も天使なんですか?」
美羽(みう・Haloベース)「まあね、私達は天界王様の指令をここで遂行する、いわゆる地上に出向している天使だよ。」
ナレーション「初対面にもかかわらず、美羽は気さくに話しかけてきた。まさか、ファンのHaloが自分と同じ仲間の天使だったなんてエルは夢にも思わなかった。」
小原昇矢「ところで君達、どうしてここへ?彼に頼まれたの?」
天使・エル「…いいえ、ひとしさんには内緒で…」


間 人志「どこいったんだ…あいつら?」
ナレーション「その頃、人志はエルたちを探していた。まさか、「Halo」のメンバーが所属する事務所でメンバーと対面しているとは思ってもいなかった。」
天野典子「なにをしているの?そんなところで…」
ナレーション「突然、人志を呼ぶ声がした。思わず驚いて振り向くと典子が立っていた。」
間 人志「何だ、君か…君こそ、なんで俺んちの近くにいるの?」
天野典子「…」
間 人志「どうしたんだよ…?」
天野典子「あなた達が考えていることは大体想像つくわ…いい、これは忠告よ、これ以上、あの事件には首を突っ込まないことね」
間 人志「何故なんだよ!」
天野典子「関係ない人間が介入したらどうなるか分かっているの?他の罪のない人たちが犠牲になるのよ…?」
間 人志「関係ないわけない!!…この事件について知ってしまった以上、俺だけ知らん顔しているわけには…!」
ナレーション「人志の思いがけない強い口調に典子は驚いた。人志は典子の様子を見て、怪訝そうな表情をした。」

天野典子「…会ったのね…あの子と…」
間 人志「…あの子って…あずみとは知り合いなのか?」
ナレーション「人志の言葉に典子は黙ってうなずいた。そして、人志のほうを見ないようにしてぽつりぽつりと話し始めたのだ。」
天野典子「ええ…あの子に助けてもらったことがあるのよ…私…」
間 人志「…??」

ナレーション「典子、テンコが初めて人間界にやってきたのは2年前だった。テンコは当時、ミッション系のスクールの生徒になり、天界からの指令を待ち、遂行していた。」


天野典子「人間界に来て間もない私はなかなかほかの子と打ち解けられなくて…その時、私と仲良くしてくれた子がいたの…その子はあずみちゃんとは別の子だけど、同じくらい優しい子だった…。」
間 人志「だった…?」
ナレーション「人志は『だった』という言葉がどこかに引っかかった。典子に聞こうとしたのだが、聞けなかった。彼の気持ちを察したのか典子は寂しそうに笑った。」
天野典子「その子ね…志保ちゃんって言うんだけど…お父さんと別れて暮らしていたの。彼女、お父さんと上手く行ってなくて、めったに会うことがなかった…その時、あの事件が起こったの…いえ、私が起こしたの…」
間 人志「どういうことだ?!」
天野典子「…天界の掟を破っちゃったのよ…必要以上に深く入っちゃったから…」
ナレーション「典子の許に天界が指令が届いた。それはなんと志保の父親のことだった。志保の父親はこのとき重い病気にかかっており、生命の期限も残り僅かであった。指令とは生命の期限が少なくなった父と娘を会わせることだった。」
天野典子「私は彼女とお父さんを会わせるためにいろいろと手を尽くした…そして、ようやく会える日が来たの…その時に…」
間 人志「…??」

ナレーション「実は志保の父親は娘と会った直後に交通事故で亡くなることになっていたのだ…天界の掟とは特定の人間の人生に深く関わってはいけないことである。志保と父親が会った直後、それは起ころうとしていた。父と娘が久しぶりに会ったその直後、一台のトラックが2人に向かって暴走してきたのだ。」

城之内志保(典子の親友)「きゃあああああ!!」
天野典子「危ない!志保ちゃん!!」
効果音「ギャギャギャギャギャーーー!!ドーーーン!!」

天野典子「私は自分の力でそのトラックをよけてしまった…2人は幸い怪我はなかったけど、私は2人を助けたことで天界から処分を受けた…志保ちゃんとも会えなくなってしまった…。」
間 人志「…。」
天野典子「別の土地に行かなくならなくなった典子は失意のどん底であった。その時会ったのがあずみだった。足が不自由なのを見知らぬ人にからかわれていたあずみをたまたま典子が助けてくれたのが出会いだった。」

間 人志「…君は2人を助けようとしたんだろ…」
天野典子「ええ…助けたこと自体に後悔はない…それ以来、人と深く関わるのが怖くなってしまった…また、あの時のように誰かと別れることになるのはもう耐えられない…」
間 人志「…」
天野典子「ごめんね…間くんには関係ないことだったわね…」
間 人志「関係なくねぇよ」
天野典子「え…」
間 人志「あずみを助けてくれたんだろ…ありがとうよ…」
ナレーション「人志はそう言うと背中を向けて典子から離れて走っていった。典子はただ、人志の背中をじっと見送るだけだった…。」


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