第2章・第7話「自分の足で歩きたい」


悪魔・ルビ「おい、ひとし!お前も隅に置けないな!」
間 人志「え、え、え??」
天使・エル「いつの間にあんなかわいい子、ゲットしたんですか?」
効果音「ドスッ、バスッ」
ナレーション「エルたちは人志を茶化すように肘鉄を食らわせた。あずみはその様子を見てきょとんとしていた。」
間 人志「ち、違う!!あずみは「あすなろ」に居た時の同じ院生だ!俺の幼馴染だ!!」
あずみ「…おにいちゃん、どうしたの?」
一同「…あ」

ナレーション「人志はすっかりエルたちは他人には見えないことを忘れていた。人志はどう返事していいのか分からなかったが、あずみはさほど気にしている様子ではなかった。」
あずみ「驚かせてごめんなさい…本当はもっと早くに連絡するつもりだったんだけど、病院に行っていたから…」
エルとルビ「…?」
間 人志「…お前、足は大丈夫なのか…?一人で来たようだけど…」
ナレーション「あずみは生まれつき足が不自由だった。はたから見ると普通の人と変わらなかったが、あずみは速く走るなど激しい運動が出来なかった。だから、体育の時間はいつも見学だった。」
あずみ「うん、他の人に道を教えてもらったりしたから思ったよりかからなかったよ…」

ナレーション「あずみは無邪気な笑顔で微笑んだ。人志は慌ててインターホンごしに母親を呼んだ。」
間 人志「母さん、ただいま…今ね…うん…あずみ、長いこと待たせてすまなかったな。あがれよ。」
あずみ「うん。」


ナレーション「あずみは人志と一緒に客間に座っていた。しばらくして母親の杏子がジュースを持って現れた。」
あずみ「おばさん、お久しぶりです。突然、連絡もしないで申し訳ありません…。」
間 杏子(人志の母)「いいのよ、あずみちゃん、この前あったのは半年前だったかしら…日下さんは元気?」
あずみ「はい、父と母は変わりありません。この前は手紙ありがとうございましたって伝えて欲しいと言ってました。」
ナレーション「日下とはあずみの養父母の家である。日下夫婦は人志の養父母と同年代ぐらいの夫婦で人志の家族とは家族ぐるみで付き合っている。」
間 杏子(人志の母)「あずみちゃん、一人でここまで来たんですって、大丈夫だった?」
あずみ「はい…。」
ナレーション「あずみは一瞬顔を曇らせた。彼女は足をさすりながら、声を詰まらせた。」
あずみ「父は私の足を治す病院を探すために夜も寝ずに走り回っています。母も私を気遣って遠い場所に行く時は付き添ってくれます、でも…。」
間 人志「…。」

あずみ「それが父と母の負担になっているのではないかと思うんです…。」
ナレーション「人志はあずみの傍で黙って聞いてあげることしか出来なかった。あずみは人一倍優しい子であった。だから、時々足が不自由な自分を責めることもあった。」
間 杏子(人志の母)「あずみちゃん、そんなことないわ…日下さんは誰よりもあなたの事を大事にしているから、あなたのために一生懸命頑張っているのよ…。」
あずみ「…。」
間 杏子(人志の母)「あずみちゃんは足が不自由で、思ったように動けないかもしれない、でも、その分、人の辛い気持ちを分かることが出来る…素晴らしい事じゃない。」
間 人志「母さん…。」
間 杏子(人志の母)「病気や怪我は決して無駄なものじゃないと母さんは思うの…もし、何処も悪くなくて健康そのものだったら、病気や怪我の人の気持ちを理解できる?」
ナレーション「思ったことの半分もいえない人志にとって杏子の言葉はとてもありがたかった。自分もあずみに何か言おうと思うけど言葉が出ないのをもどかしく思っていたのを杏子が気づいているようだ。」

間 杏子(人志の母)「人志、口が達者な人ばかりがいいとは限らないわ。どんなに素晴らしい事をたくさん言っても人徳がなければ、その言葉も重みがなくなる…言葉は選ばなくてはいけないのよ。」
あずみ「おばさん…」
間 杏子(人志の母)「あずみちゃん、人志は無口だけどとても優しい子よ…あずみちゃんのような子が人志のお嫁さんになってくれたらどんなに幸せでしょうね。」
効果音「ブハッ!!」
ナレーション「杏子の突然の言葉に人志は飲んでいたジュースを吹き出してしまった。慌てて吸い込んだので鼻に少し入ってしまった。人志はあまりの照れくささにわざと大きなせきをした。」
間 人志「ゲホッ、ゴホッ…ゲホッ!!」
あずみ「お、おにいちゃん、大丈夫?!」


ナレーション「杏子は2人を気遣うようにその場を離れた。人志はあずみと2人きりになったことに気がつき、我に返った。」
間 人志「そういえば、あずみ、何か用事があったんだろ?」
あずみ「…あっ」
ナレーション「人志の言葉にあずみは何か思い出したようにカバンの中を開けた。彼女は2枚の紙切れを人志に見せた。」
間 人志「…Halo…?これ、Haloのコンサートのチケットじゃないか?よく手に入ったな…」
ナレーション「それは、今度近くの円形劇場で行われるHaloのコンサートのチケットだった。円形劇場は人志の町にある公共施設でここでよくいろんなイベントが行われている。アーティストのコンサートもその中のひとつだった。」
あずみ「私も最初は手に入ると思っていなかったからびっくりしたよ…どうしてか分かる?」
間 人志「…??」
ナレーション「あずみの言葉に人志は不思議そうな顔をした。あずみははにかみながらそのいきさつを話し始めた。」

あずみ「この前、Haloの公式ファンクラブにファンレターを出したの。私、手紙を出すのは初めてだったからとても緊張した。」
間 人志「どんな事書いたの?」
ナレーション「手紙の内容はこうであった。あずみはずっと前からHaloのコンサートに行きたいと思っていた。だが、自分の足の治療のためにたくさんのお金が必要で、両親になかなかいえないこと、それだけでなく、自分の足が不自由なために遠出も思ったように出来ないことなどを手紙につづった。」
あずみ「友達も何度かコンサートに誘ってくれたんだけど、私のせいで足手まといにならないかと不安になって…行きたいけど行けなくて…」
間 人志「…」
ナレーション「あずみがファンレターを出して数日後の事だった。彼女宛てに一通の手紙が届いた。それはなんとHaloのメンバー達からだったのだ。」


あずみ「私の手紙を読んでくれたらしいのね…手紙に今度のコンサートのチケットが入っていたの。」
間 人志「何で2枚あるんだ?」
あずみ「お友達と見て欲しいって書いてあったの…だから、人志おにいちゃん誘ってみようかなって…」
間 人志「…」
あずみ「おにいちゃん?」
間 人志「あ…な、何でもない…俺で良かったら…」
あずみ「ほんとう?うれしい、ありがとう!おにいちゃん!」
ナレーション「この時、人志の脳裏にテンコの言葉がよぎった。もしかして、テンコはあずみの事を言っていたのだろうか…複雑な心境だった」
テンコ「コンサートを中止にするわけにはいかないのよ…ある女の子と約束した大事な日なのよ…」
間 人志「(まさか、コンサートの会場に爆破予告が届いたなんてあずみに言えない…なんとしても阻止しなければ!)」


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