第1章・第1話「俺には天使と悪魔が見える」

効果音「チュンチュン…(鳥の声)」
ナレーション「「あすなろ」の前で輝子が人志を拾って10数年が経過した。人志は6歳の頃、間(はざま)という名の夫婦の養子となった。人志は高校生になっていた。」


効果音「ジリリリリリ…(目覚まし時計の音)」
間 人志「…うるさいなぁ…」
ナレーション「人志は布団に入ったまま手探りで時計を探していた。不機嫌そうな顔で文字盤を見たとき、人志の顔色が変わった。」
間 人志「はっ、8時??」
ナレーション「人志はベッドから転げ落ちるように飛び起きた。彼はあわてて学校の準備をしていたとき、人志の耳元で声が聞こえた。」
天使・エル「いつも前の日に準備しておかないと駄目っていってるでしょう!」
間 人志「(げっ、ま、また…)」
悪魔・ルビ「また、いつものお説教が始まったな…」
間 人志「(や、やめてくれえ…)」
ナレーション「人志の目の前に突然2人の少年が現れた。1人は金髪にショート、もう1人は紫色の髪に額には一角獣のような角が生えていた。それもそのはず、彼らは天使と悪魔だった。よく漫画やアニメで登場人物が葛藤するシーンに天使と悪魔が出てくるが、まさにそれそのものだった。」
間 人志「(漫画やアニメでこんなシーンがあったのはよく見てたけど、まさか、俺に天使と悪魔が見えるなんて…誰も信じてくれないと思うけど)」
ナレーション「人志はため息をつきながら学校の準備をしていた。実は彼らとの『付き合い』はかれこれ10年になる。しかもこの2人は人志しか見えなかった、よって、彼の頭痛の種であった。」


間 茂美(人志の父)「母さん、人志はどうしたんだい?具合でも悪いのかい?」
間 杏子(人志の母)「ええ、遅いわね、人志、このごろ疲れているみたいだったから…」
ナレーション「彼らは人志の養父母、間(はざま)夫妻。6歳の頃、子供のいない夫妻が人志を引き取ったのだ。彼らは子供に恵まれず、養子を探すために「あすなろ」に相談に行ったら、人志がいたのだ。彼らは人志をひとめで気に入り、養子に迎えることができた。」
効果音「ダダダダダ…(人志、2階から降りてくる)」
間 杏子(人志の母)「人志?ご飯は?」
間 人志「ごめん!パンだけちょうだい!」
ナレーション「人志は食パンを口に頬ばるとそのまま玄関に向かおうとしていた。」
間 杏子(人志の母)「人志!せめて牛乳飲みなさい!」
間 人志「ムガァ…(はいと言っている)」
ナレーション「人志はパックの牛乳を手に持ち、玄関へと消えていった。」


天使・エル「ひとしさん、ご飯、ちゃんと食べてください!」
悪魔・ルビ「お前、母親みたいなこというなよ」
天使・エル「朝ごはんをちゃんと食べないと授業に集中できませんよ!ひとしさん!」
間 人志「あああ、もう!うるさい!」
ナレーション「人志と天使と悪魔の3人はわめきながら走っていた…もっとも、他の人から見ると人志が1人でわめいているようにしか見えないので、通りがかりの人たちは変な顔で見ていた。」
間 人志「(あああ…朝から何でこんなにやかましいんだろう!)」


ナレーション「人志は遅刻寸前で学校に着いた。時間が経過し、今は2時間目の数学である。人志はあまり得意ではない。」
間 人志「(はあ…、宿題も夜遅くまでやってたけど、わかんないし…)」
ナレーション「ひげ面の体格のいい男性の教師が黒板に何かを書いていた。そして、黒板を書き終ると生徒達の方を向いた。」
教師A「えー、この問題だが誰かに解いてもらおう。昨日の宿題で予習をしたから簡単だろう…じゃあ、間 人志!この問題解いてみろ!」
間 人志「(お、俺?)」
ナレーション「人志は黒板の前に立った。これは確か昨日の宿題でやった計算問題だ。でも、問題を見た瞬間、人志の頭は真っ白になった。」
間 人志「(ぜ、ぜんぜん、わかんねえ…)」
ナレーション「その瞬間、また人志の耳に『彼らの声』が聞こえてきた。」
悪魔・ルビ「ひとし!第1問の答えは5y+4だぞ…第2問は…」
間 人志「(あ、あ、またかよ…)」
ナレーション「悪魔・ルビが人志に耳打ちするように現れた。それをさえぎるかのように天使・エルも突然出てきた。」

天使・エル「ずるはいけませんよ!」
悪魔・ルビ「何言ってんだよ。ひとしが困っているんじゃないか。」
天使・エル「自分の力で答えないと自分のためになりません!」
ナレーション「2人は人志にお構いなしに喧嘩し始めた。人志はうんざりした表情でそれを見ていた。」
間 人志「(そんなことはどうでもいいんだよ…頼むから…俺の耳元で喧嘩するのはやめてくれよ…)」
効果音「(エルとルビが言い争っている)」
間 人志「やめろってんだよ!」
ナレーション「我慢できなくなった人志は大声をあげた。はっとわれに返ったそのとき、ひげ面の数学教師の引きつった表情が人志の目にうつった。」
教師A「おい、間…この問題を解くのがそんなに嫌なのか…?」
間 人志「い、いいえ!(あたりを見回す)」
ナレーション「エルとルビの姿はすでにそこにはなかった。人志の様子を見てくすくす笑うクラスメートもいた。」
間 人志「(あ、あいつら…)」
教師A「ハザマァ!!!」


効果音「キーンコーン、カーンコーン…」
ナレーション「時計は正午を回っていた。人志は学校の屋上のフェンスにもたれかかるようにして座っていた。ここは人志の好きな場所だった。一人でボーッとできるからだった。」
間 人志「ああ、腹減った…」
ナレーション「人志はいそいそと弁当箱を開けた。人志の母は毎日、丁寧に弁当を作ってくれる。冷凍食品は決して使わず、すべて彼女の手作りだった。」
間 人志「今日のおかずは何かな…母さんの弁当、美味いんだよなあ…」
ナレーション「人志が弁当をあけようとしたそのとき、誰かが声を掛けた。顔を上げると人志はすごい顔で驚き、のけぞった。」

悪魔・ルビ「…ひとし、何、驚いてんだよ…」
間 人志「ルビ!何でそこにいるんだよ!昼弁のときはめったに顔出さないのに!」
悪魔・ルビ「何って、今日は退屈な授業ばかりでさあ…、腹も減るぞ…おっ、それ、お袋さんの弁当だろ?少しくれよ」
間 人志「お前にやる弁当はない!」
ナレーション「人志は弁当箱を隠すしぐさをした。わざわざ屋上に行って食べるのは人のいるところではエルとルビが出る確率が高いので、静かな場所を選んでいた。それを見事にルビは裏切ってくれた。」
間 人志「お前、飯、食えるのかよ?」
悪魔・ルビ「あ、そ、ケチ」
ナレーション「ルビはぱちんと指を鳴らした。すると、人志の弁当箱から何かが出現した。それはルビの元に向かい、彼の口元に飛び込んだ。」
間 人志「あーっ!それ、俺の一番好きなハンバーグ!」


悪魔・ルビ「うまいなぁ、もう1個、くれよ」
間 人志「だ、め、だ!!」
ナレーション「このままではルビに全部弁当を食べられてしまう。人志は弁当箱を抱え、ルビから逃げた。」
悪魔・ルビ「ふん」
ナレーション「ルビが鼻をならした。今度はエビフライが宙を浮いていた。」
天使・エル「なにやってんですか!ルビ、行儀が悪いですよ!」
間 人志「突っ込むところが違うぞ!エル!」


生徒A「おい、あれ、3組の間じゃないか?」
生徒B「入学した当初から変わったやつだと思ったけど…やっぱり、変なやつだ…」
ナレーション「屋上で昼食を食べに来たクラスメートが怪訝そうに人志を見ていた。人志は彼らの視線に気がついた。気まずい空気が流れていた。エルたちの姿はいずこへ消えていた。」
間 人志「(お、俺って不幸な星の元に生まれたのかも…ああ)」


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